鏡のなかの鏡: 迷宮
鏡のなかの鏡: 迷宮 / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
ミヒャエル・エンデによる30の短編。真夜中に見る夢のような幻想的な物語ばかりで、読んでいると胸の奥がざわつく。「婚礼の客は踊る炎でした」のように最初の一行がおそろしく巧くて、一気に物語の中に引き込まれる。4番目の物語のように現代社会を批判する内容のものもあるが、寓意を読み取るよりも、この鮮やかなイメージの世界にいつまでも浸っていたいと思わせてくれる物語が多い。暗くて重たい内容なのだが、時折希望が仄見えるところがあって、そういった部分に一番惹かれた。
2016/09/12
けいご
夢の中だと「矛盾する不思議な出来事がごく当たり前に成立する」事が、なんと目を開けた状態で感じれる奇妙な一冊でしたw目を開けたまんま夢を見てるような感覚?多分だけど、エンデはある程度無目的に言葉を綴り、読者が勝手に言葉をつなぐ事で瞬間的に人の心に読者毎に物語が発生するようにしたかったのかな〜っと思いました。っと言うよりも、これは本ではなくアートだねw?文章で綴られてはいるけど瞬間的イメージのランダム発生装置だと思いますw★この作品に必要なのは理解よりも自分の中に何が発生しているか?を感じる取る事が大事かも?
2020/12/06
Takayuki Oohashi
カフカの世界には、永遠に出られない王宮や、決して開かれることのない扉など現実からは隔絶したモチーフがたびたび出てきます。そして、このエンデの物語も、そのような寓話的な世界が展開されていました。それも売春婦などの出てくるとびっきりの大人の世界でです(笑)。一つ一つの物語は意味深です。現代批判というくくりでは表せないような人間の根源的な在り方を書いているような気がします。とにかく僕のなまっていた創作意欲を刺激する本でした。僕もこのエンデのように、自分の思想を深めて、もっと生活や人生を充実させたいと思いました。
2016/10/04
wildchild@月と猫
久しぶりに再読。まさにエンデ自身が言う通り、意識の迷宮に迷い込んだ気分になる読後感。地球が見ている悪夢を写し取ったようなイメージ。「迷宮を去る者だけが幸福になれる。だが、幸福な者だけが、迷宮から逃げ出せる。」私達人間は、永久にこの迷宮から逃れることのできない、哀れな生物なのだ。「勝つ見込みのない戦いをする、それが生きるということなんです!」
2014/06/23
Gin&Tonic
「許して、ぼくはこれより大きな声ではしゃべれない。」30の短篇からなる連作。前の話が次の話に影響していく、複雑な視覚的イメージの連鎖。不穏でシュルレアリスティックなイメージの迷宮。白昼夢のようで、読んでいて自分が今どこにいるのか解らなくなる、そんな不安に駆られました。考えるべきか、感じるべきか? 数ヶ月前にマグリット展に行った時のような、何とも不思議な気分を味わいました。
2015/08/12
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