現代SFのレトリック
現代SFのレトリック / 感想・レビュー
はにまる
新しい作家も古い作家もランダムに読んでいると、何が歴史で何が同時代かよくわからなくなる。本書は1992年の刊行だが、本書で取り上げられているギブスンやスターリング、ルーシャス・シェパードが当時の同時代で、レムやディック、バラードがそれに繋がる歴史となるだろうか。ピンチョンやディック、バラードからのサイバーパンク〜スリップストリームという当時の流れは、自分が読んできた作家でもあり、非常にわかりやすい。今の同時代のSFは(自分の中ではテッド・チャンやアンディ・ウィアー、そして三体だが)どんな流れなのだろうか
2024/04/06
ハイザワ
筆者の「レトリック」は「〇〇風の××な△△」と作品の構成要素を簡潔にまとめてみせるところに特徴がある。たとえその作品を脱構築的なアプローチで読んでいくことが主眼となっている場合でも、レビューの仕方には広告的な側面がある。一つ一つの形容詞をうまくはめこんでいっている感じ。その的確さは文章の流れをスムーズにする一方、作品をものすごくシンプルなものに還元してしまうリスクも孕む。そのようにくっきりした枠を嵌め込むあたりからも、筆者が個々のジャンルを前提に作品を論じようとする姿勢がうかがえる。
2020/08/13
Ryosuke Tanaka
長年文芸批評という知的営為をどうやって位置づけたらいいのか、よくわからなかったのだけど、これ読んで、ラップバトルみたいなモノかな〜と思った(ラップバトルのルールもよく知らんが)。換喩・提喩・暗喩の"決まり手"を使いながら、テクスト・読者・作者・社会などの構造が、カッコよく呼応しているように見せると、勝ち、みたいな。『「サイエンス」と「フィクション」の世紀末』だけで後で再読。何度も戻ってきて楽しい書物だと思う。
2016/04/15
ponkts
非常に難解。全体を通してポモポモしまくっているが、賞味期限切れと言って片付けてしまうには惜しい代物。アナロジーをかなり推し進めながら言表空間と物語構造の分析をしているので、一章の『ソラリス』論からしてまず苦しむ。とはいえ、三章は楽しい。1973年に『クラッシュ』と『重力の虹』が同時に出てきたことはモロに SF の定義不能性を象徴しているのではないかという主張。最終的に主流文学がメタフォリゼーションへ赴き、SF が字義性・隠喩性の差異の爆破を試みる点で、両者とも <現在> の視点からの意味脱臼を可能にする。
2014/06/13
hobby no book
一つひとつの論考が程よい長さで、一人の作家、一つの作品を割と掘り下げて丁寧に扱ってくれているので、テンポよく満足度も高く読了。
2016/06/30
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