小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波 科学ライブラリー92)
小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波 科学ライブラリー92) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者は鳥の歌の研究でよく知られた岡ノ谷一夫氏。これが最初の単著であるらしい。それだけに意気込みもすさまじいものがある。それが勢いとして伝わってくる半面、研究の成果としては未だ結果が出ていないものもまた多く残され、今後に課題と期待とを残す。研究素材となったのはジュウシマツ。知らなかったのだが、江戸時代に輸入されたコシジロキンパラが経年飼育され、家畜としてのジュウシマツが誕生したらしい。そして、彼らは外敵がいないために思う存分に歌を発達させたのだそうだ。お陰でこうした研究に大いに寄与することになったのである。
2023/10/14
loanmeadime
今年初めエーコの「完全言語の探求」を読んだときに、現代科学が言語の発生をどう考えているか、を調べてみたいと思ったのですが、ネットや百科事典などを当たってみると、それは、どうもなかなか難しい話らしい、ということが分かって来て、そもそも言語とは何ぞや、ということになって、同じコミュニケーション手段の人間の言語と動物の声とは、どう違うのか、何かわかるか、と思い、読みました。ジュウシマツのさえずりに文法があるということで、人間に独特のものはもう少し先にある、と言う風に思いました。
2021/07/28
Nobu A
2003年初版。以前読了の「ことばの宇宙への旅立ち3」で知り得た著書。改めて思うが、鳥って凄いな。恐竜の子孫とも言われ、歌まで歌う生物。大津由紀雄先生曰く、著者の岡ノ谷一夫先生は英語の達人でもあるとか。世の中、凄いことだらけじゃん。「岩波科学ライブラリー」シリーズだけあって簡潔で読みやすい。しかし、内容は決して易しくはない。鳥の歌の学習過程と人間の音声言語獲得過程には共通点が多い。従来の意味から文法の進化の言語起源論に大胆にも性淘汰を絡める仮説。現在、どこまで解明が進んでいるか知らないが、興味深い内容。
2022/09/09
calaf
日本で品種改良(?)されたジュウシマツは、鳥の中では複雑な歌をうたう。その仕組みを研究することで、人間の言語機能発達について分かるようになるらしい???
2013/10/25
ちあき
文法と意味が独立に進化しうるという結論/仮説はまさしくセンス・オブ・ワンダー。地道な実験・観察から結論が導かれるプロセスもおもしろいが、神経行動学者と行動生態学者の違いなども興味深い。読みすすめるうちに「人はどのようにして研究者になるのか」「自然科学の本質はどこにあるのか」がわかってくるから、現場主義の科学入門書としても読める(専門的な記述は『生物と無生物のあいだ』より少しむずかしい程度)。飾らない文章、実験をおこなった学生の名前をきちんと書いてあるところが、著者の人柄をうかがわせて好感度大。
2009/01/14
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