吾輩は猫である (漱石文学作品集 1)
吾輩は猫である (漱石文学作品集 1) / 感想・レビュー
袖崎いたる
教科書のダイジェストだけで看過すると大損する作品の一例。書いている自分←猫、書かれている自分←著者、書かれた自分←苦沙弥――な構図で展開する重層的自意識な私小説。或いは脱私小説の試みか。この作品の教科書然とした解釈として文明批判があるが、それに関しては近代化に伴ってキャラ立ちしてきたもの、存在の量感を増してきたもの(自我、他人、女)へと口角泡を飛ばしてなされている。それがまた現代的であるのが渋い。吾輩は周知の如く溺死するが、本書の文明批判である忘己自若を思えば、作中超越論的な視座の死という退場は自明かも。
2016/10/14
アズサ
呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする。そうだね、みんな心の底を持っている。有難い、の言葉で作品が結ばれたことに軽いショックを覚えた。読むまでに随分時間がかかってしまったが、読めてよかった。
2017/07/06
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