内なる他者のフォークロア
内なる他者のフォークロア / 感想・レビュー
うえ
民俗と差別の問題を扱う。「折口信夫のはじまりの風景のなかには、濃密なる差別の影が見え隠れしている。はじめての小説「口ぶえ」には、披差別のメタファーがくりかえし登場していた。はじめての民俗採訪記「三郷巷談」には、生地・木津に近い披差別部落にまつわるフォークロアの断片が拾われていた。…折口はその出自からして、差別された人々のかたわらにいて、かれらとともに在ることを、生存の欠かしえぬ条件としてかかえ込んでいた…そのホカヒビト論の基層に埋め込まれた原風景そのものとして、「口ぶえ」や「三郷巷談」は読み直されるべき」
2022/03/15
ダージリン
差別の発生・構造はスリリングなテーマなのだが、何かを言い得る所まで近付けず、延々と周辺を廻り続けているようなもどかしさを覚えた。イザベラ・バードの「日本奥地紀行」から射返される日本像には新鮮な面白さがあったのだが。
2012/06/10
2960
論考を集めて一冊の本として編んであるので、章ごとに文体や内容のトーンはそれぞれ異なる。そのため、一冊の書として気負って読むよりも、好きな章から着手して、それから徐々に読む範囲を広げるのがいいか。第4章と終章には、はっきりとは書かれていないが、著者自身が己の眼差しを厳しく問い続ける姿勢が見え隠れしている。この2つの章を読むだけでも、この書に込められた熱は感じられるように思う。
2012/03/05
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