言葉をもみほぐす
言葉をもみほぐす / 感想・レビュー
アキ
表紙のテッポウユリの花とキツネのような手の銀板写真がなんだかエロティック。『性食考』『ナウシカ考』の赤坂 憲雄と『縁食論』の藤原 辰史の往復書簡。歴史学・民俗学という範疇にとどまらず、臨床の知という共通性を持ち、経済至上主義の現代にこぼれ落ちてしまった言葉をたんねんに拾い上げるようなやり取り。藤原氏が高校生に「勉強は何のためにやるの?」と聞き「次の世代子孫のために」と答える。赤坂氏は「それはまっすぐな希望に満ちていますか、それともいくらかの不幸を背負わされていますか」と返す。赤坂氏の民族知に触れたくなる。
2021/08/04
ネギっ子gen
『性食考』『ナウシカ考』『岡本太郎の見た日本』の赤坂憲雄と『ナチスのキッチン』『縁食論』の藤原辰史が文を交わす。それに、木村伊兵衛写真賞の新井卓による銀板写真が19点。『図書』で2019年から20年にかけ18回、同時代を生きることの歓びを感じながら言葉を揉み解し思索を交わした往復書簡を、書籍化。赤坂:<ひとも世界も、とりあえず、何だか怪しい気配に満ちている。恐れる必要はない。それはむしろ、とてもたいせつな生きることへの励ましであり、可能性の種子であり、あえて言ってみれば野性からの呼び声のようなものだ>。⇒
2023/07/31
けんとまん1007
赤坂先生、藤原先生の往復書簡。そして、新井さんの写真が、その書簡の持つ空気感・力を伝えている。お二人の持つ言葉の力、言霊。日々の営み、この国への思い、未来を背負う人たちへの思いが、決して派手ではないが、深く伝わってくる。日々、言葉がどんどん軽薄化し、力を持たなくなっている今だからこその本。わかりやすい、自分の言葉で伝えるように努めること・・・これしかない。
2021/06/04
ゆう
「災後」ではなく「災間」。エリアメールがひっきりなしに鳴る連休に、本書のこの言葉がずっしりと重い。けれどその重さに、同時に心が落ち着く。経験したことのない、ふわふわとした不安に、確かな形が与えられるから。名前のないものに、対峙することはできない。だから私は、言葉を欲しがる。ふわふわとした不安を埋めてくれる、大きな言葉に身を投げ出すことの心地よさ。この胸の小さな穴を埋めるために求めたものは、いつのまにか他者への暴力になっていたりする。そのことに気がつく。もっと、もっと、もっと。言葉をもみほぐさなくては。
2021/08/12
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
困った、言葉がみつからない。どう賞賛すればいいのか。言葉とは言の端でしかないという羞恥感を伴うのが正常な感覚であるという指摘とともに、だからこそ端っこの奥にしたためられているものを見逃してはいけないということ。往復書簡とは対談と異なり、往復する間の時間も空間も全てを抱合しているのだなと味わい深さに納得。すぐ値段のこと考えちゃうけど、このテキスト、装丁、写真に1900円をスッと払えないってのは貧しいことだなあ。
2021/05/13
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