哲学の起源
哲学の起源 / 感想・レビュー
funuu
宗教の変化も、このような交換様式の変化から見ることができる。簡単に言うと、アニミズムでは、万物にアニマ(霊)があると考えられている。ゆえに、人はアニマを抑えないと、対象と関係することができない。たとえば、動物を狩猟することができない。その場合、アニマに贈与することによってそれを抑え、対象をたんなるも物にしてしまう。それが供犠である。死者の埋葬・葬礼も、贈与によって死者の霊を抑えるためになされる。呪術もまた、このような贈与交換によって成立する。アニマに贈与することによって、自然をたんなる物として扱えるように
2016/08/07
RIN
世界史の構造では語られなかった、交換様式A(氏族的互酬交換)をより高度な次元で回復した交換様式Dが宗教的な形をとる事なく現れるにはどうすればいいのか、そのヒントをイオニアの政治と思想に求めた結果出来上がったのが本書である。著者はデモクラシー(多数派支配)をイソノミア(無支配)の堕落した形態であると捉え、プラトンとソクラテスの思想の乖離性を追求する。正直理解には遠く及ばないが面白い。著者の魅力は読者に易しく伝えようという意思を一切感じさせない、その孤高さだと思う。美しい知性は容赦がない。だから私は本を読む。
2022/11/12
mstr_kk
僕が昔から気になっていることや最近気になっていることをどんどん扱ってくれていて、とても面白いです。特にソクラテスの話には感動しましたし、ゼノンのパラドクスやホメロスについての話は眼から鱗でした。それにしても、まるで柄谷さんが解脱でもしてしまったかのような分かりやすさが異様でもあります。すべてが一撃で明瞭に説明され、文章として説得力もあり、逆に心配に……。
2014/12/21
hitotoseno
イソノミア探究の書として話題になった本だが、むしろ本領はこれまで判然としなかったところが多かった、ソクラテス以前の哲学者の系譜をしっかりとした論理に基づいてまとめ上げた点にあるだろう。単に歴史としてまとめあげるだけでなく、イオニア派の自然哲学をスピノザへとつなげ、ソクラテス=ディオゲネスの打ちだした世界市民をカントの線へと持っていくという、ギリシャの哲学者を西洋哲学史の中へと組みこんでみせる技術も流石のお手前である。起源は忘却されることによって始まる、という『日本近代文学の起源』以来のブレない手腕によって
2013/03/04
壱萬参仟縁
近代民主主義とは、自由-民主主義(26ページ)。先ほど読んだフクシマ論の仏人も民主主義をかなり取り上げていたが、この非効率だが社会にとっては必要な市民社会の礎をどう再考するか。自由と平等の同時的追求は理想だが、なかなか難しい課題。自由市場で格差ができたのだから不平等があるので。古代ギリシアの場合、遊牧民や戦士的な人は手仕事を軽蔑したという(86ページ)。土着的で一つのものにこだわる流儀に同感できなかったのだろう。流動的で攻撃的な人には理解できない感性の部分か。アテネ市民の多くは貧しかった(190ページ)。
2013/01/14
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