漱石 心 (祖父江慎ブックデザイン)
漱石 心 (祖父江慎ブックデザイン) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
珍しく、豪奢な装丁版が図書館に所蔵されるようになったことに驚いて借りて再読。生きて経験を幾分か積むと心に残る文も異なってくるからこそ、生涯を通して読み続けたい本の一つだと思う。今回は「その人にかつては傅いたことが、後にその人の頭に足を乗せることになる」という文。私は恐れても慕っていた相手の卑怯さを知ったことから見損ない、「親子」という関係性を信じすぎて知ろうともせず、唯々諾々と従ってきた過去の自分自身への怒りから復讐を考えたこともある。この文章はそんな私の卑怯さや恩知らずさ、心の狭さを突きつけてきた。
2016/01/14
テツ
いつ読み直しても新しく何かを感じ取れる夏目漱石の『こころ』 望んでいた最愛の者を手に入れたのに先生は苦しみ続けていた。自分の人生においてやってしまった取り返しのつかない、申し開きの出来ない行いを経て、そこから生まれた呪いに縛りつけられた先生の生涯。自分に好意を持ち近づいてきた主人公に対してその呪いを開示し楽になることを選んだ。無駄な人生だったのかもしれないけれど、自らについて、自らの生と行為について「何故」と問い続けた先生は美しい。死に逃げずに問い続け苦しみ続けるべきだった。
2018/09/25
Kei
みなさんも書いてらっしゃいますが、電子Bookに対抗する手段の一つ。これから、廃版になった名著など豪華、もしくは凝ったつくりにすれば、買う層があるのでは?ただ、そうなると読み捨てて、その中に心に残る出会いみたいなのは少なくなるなあ。読書すら、二極化になるでしょうね。個人的には、漱石好きになったきっかけの本。思い入れがあります。私の永遠の一冊。(笑)
2015/04/12
お萩
こだわりが変態と言っていいほどマニアックなのだが(――の長さも手書き原稿の長さに合わせて3種類用意!とか)、漱石ファンとしては書き間違いも愛おしく振られたルビに深読みし、漢字の使い分け(淋と寂とか)にもんもんとし、しかしそんな時間が何より楽しく本当に素敵なものを作ってくれたなあと。そして何度も読んだのにも関わらずいつの間にか物語に引き込まれている『心』の魅力。いつまでも手元に置きたい。
2016/01/13
moonanddai
たまには漱石でも…と。「心」は未読でしたが、次第に頁を繰る手が遅くなりました。かつての人たちはここまで内省的だったのですね。「結局私も叔父と同じだった…」という先生の述懐が心に残ります。
2020/11/01
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