大人にはわからない日本文学史 (ことばのために)
大人にはわからない日本文学史 (ことばのために) / 感想・レビュー
いちろく
紹介していただいた本。著者独特の感性で提示される文学論。近代文学と現代文学を同じ土俵で述べる序盤の展開から個性が際立つ。偏愛と書いても誤読ではないと思われる著者自身が提示した作品の評論が興味深かった。作品を様々な方向から観ていく為の指針の様な本という印象でもあった。気になった点は、時間を空けて再読したり繰り返しページを捲ったので、読了までチト時間が掛かった1冊。
2019/05/08
阿部義彦
図書館本。2009年、岩波書店。高橋源一郎さんの講義録。かなり大胆な小説論です。小説の始まりの樋口一葉の文章を実際に朗読しつつ、それを歴史を飛び越えて、綿矢りささんの文章と対比させて、存外やっている事は文学史的に一緒ではないかと言うコペルニクス的展開を知らしめます。『過去』なんて無いんじゃないか?昔も今もみんな同じ事を考えて小説を書いていたんじゃないのかな?『歴史』とは鑑賞するために壁に掛けられた絵では有りません。過去と現在を自由に行き来させる、大人ならまずやらない文学論の始まりです。
2023/02/17
ヨクト
高橋源一郎さんの小説に衝撃を受け本書を読んでみた。古今の日本文学作品を読み比べ、変わったもの、変わらなかったものを解説していく。「現在の文学はなっとらん」という視点ではなく、変わってしまったものもしっかりと捉えて受け入れる姿勢があるからこそ、高橋源一郎さんの作品自体も時代の波の中で色褪せないのだろう。
2013/10/06
aki
表紙が個性的。内容はちょっと難しかった。後半は特に「私」というものを深く突き詰めて考えていく内容だったがよくわからなかった。たぶん昔読んだことがあるけど、その頃のほうがまだ理解できてたかも。『大人にはわからない日本文学史』だし、わからなかったってことは大人になったのかなあ…
2016/09/23
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目から鱗の文学史を楽しめる、遊び心の溢れる一冊。近代文学の大半を占める自然主義的リアリズムは、曖昧なものに意味という確固たる「輪郭」を与える営みであった。著者は、「私」に固有な内面の炙り出しから獲得される一般的なリアルの一方で、実験的に樋口一葉と綿矢りさを重ねつつ、「別のリアル」の徹底の極致を照らす。解なき問いに挑む戦いに疲弊した現代日本文学は、歴史の狭間で「現在」をナンセンスに凝視するしかない。小説のOSが更新された今、果たしてことばはどこへ向かうのか。それを確かめるために、今日も本を読むのだろう。
2014/04/09
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