日本古典文学大系 48 西鶴集 下
日本古典文学大系 48 西鶴集 下 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『世間胸算用』(1692年刊)は『日本永代蔵』(1688年刊)と並ぶ、西鶴の町人ものの代表作である。『永代蔵』には「大福新長者教」の副題が付されており、半数以上は致富譚で占められていた。すなわち、作家も読者も一獲千金の夢を一縷は信じることができたのである。ところが『胸算用』の副題は「大晦日は一日千金」※であり、そのたった一日での攻防が描かれる。主人公たちには、もはや名前さえない。全篇にわたって滑稽ではあるが、それはもはや悲愴みさえ帯びている。それでもしたたかな町人像を描いて見せた西鶴の筆が冴えわたる。
2017/12/24
笠井康平
経済小説の元祖として省みるのもよし、ノンフィクション小説の源流に位置付けるもよし、写実主義や新戯作派とつないでもよいでしょう。
2013/07/05
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