詩のなぐさめ
詩のなぐさめ / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
心に寄り添ってくれる表現形式としての詩の魅力を語りつくすエッセイ集。東西の文学に精通している著者らしい筆の運びが印象的で、漢詩について語った後に、ギリシアの詩について書くといった軽やかな精神の動きに魅せられながら読んでいった。美の表現の形式としての詩だけではなく、社会の歪みに正面から向き合う詩を紹介しているのが特長の一つ。「戦闘的な詩人」の章に収められた、痛烈なアメリカ批判のネルーダの詩は、言葉の芸術としての詩の凄みを感じさせるものだった。「詩はこの憂き世を生きてゆく上でずいぶん役に立つもの」1ページより
2015/12/21
KAZOO
池澤さんによる世界の昔からの様々な詩(幅広い概念での)に関するミニ評論です。私は岩波の雑誌の「図書」連載中にも読んでいるのでわかりやすく読むことができました。基本的には岩波文庫に収められているものを取り上げているのでなじみがあるものが中心となっています。一つの詩からほかの文学作品へも飛んで行ったりしているので私にはかなり楽しめました。
2018/02/27
mizuki
詩を諳んじたり引用したりする人に本の中でしか会ったことがないわたしは、詩集の初心者です。そんなわたしに道案内をしていただきたくて手に取った池澤夏樹の詩集エッセイ。これは少し敷居が高く感じてしまったが、まずは紹介されていたイェイツ、リルケ、シェイクスピアを手に取りたいと思う。池澤氏が「詩は今いるところであなたの心に作用する」「詩を読むことを習慣にするのは生きていく上で有利である」と語っているので、彼を信じ、まずはお気に入りの詩集を探そうと思う。
2016/02/10
jam
詩はなぐさめだと書く。小説が別世界への扉なら、その時響く詩が、独りの自分への寄り添いだと。著者は東日本大震災後、詩に係る連載を始め、まとめたものが本書だ。遠い時間を超えて普遍性がある詩は、引用という原理により救済が働くと。なるほど、そうかもしれない。「いまはの際にゴルゴオ、母親のうなじへ手を 差し延べて縋りつつ、涙ながらに向かいふやう、母さまはまだずつと、父さまのお側にいらして、もっとよい仕合わせに また他の娘を産んで下さりませ、白髪の老の おみとりにもと。」少女ゴルゴオの墓碑銘、詩は心深くに寄り添う。
2016/01/17
踊る猫
池澤夏樹はさすが「アクティビスト」「行動派」だなと唸る。いや、やっていることは主に岩波文庫の詩を読むことなのだけれどそのフットワークの軽さが伊達ではないのだ。東洋/西洋、国内/海外……ジャンルを軽々と越境してさまざまな詩を読みふけり、それについてあくまでアマチュアとしての謙虚さを忘れず、だがしかし鋭い目つきで読み進めていく。そして「彼らしい」と思えるのは、時流に敏感であること。3.11について鋭敏に反応しそこから生まれ落ちた詩も取り上げ、アクチュアリティを醸し出すことを忘れない。この果敢さと良心が印象的だ
2023/07/31
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