ミヒャエル・エンデ生誕九〇年記念版 鏡のなかの鏡――迷宮
ミヒャエル・エンデ生誕九〇年記念版 鏡のなかの鏡――迷宮 / 感想・レビュー
ケイ
鏡に映るのは左右が反対。水の鏡なら、少し歪んで違う姿が見える。鏡がいくつもいくつも重なっていたら…、そこに別の真実を映すものが混じっているかもしれない。神話や伝説の舞台、戦場、サーカス、王宮、ゴルゴダの丘、天使のいるところ、そんなところを、歪んで見せる鏡を通して覗き込む、入り込む。よく知りたくて。私が探す花嫁は醜い老婆ではなかろうかと不安で、磔にされる彼の声を聴きたくて。エンデにとっての導き手は、彼の父。画家であった父。挿絵は父の作品たち。天使の怒槌が振り下ろされたかのような迫力の場面が最も好き。
2019/12/29
KAZOO
エンデの生誕記念出版ということで最近の本にしては豪華な装丁で大切にしたい1冊です。新訳なのですがすでに全集などでも読んでいます。エンデは最初に日本で「モモ」が出版されたときからファンになりドイツにいたときも原書を購入して読んでいました。この本では父親が書いた挿絵がそのままでじっくりと読みました。短編集なのですがどこかでつながりがあるような感じがこの題名とぴったりです。
2019/12/25
アキ
著者がこの書を迷宮と称するように、30のエピソードは一連の物語として読むことは困難であり、読み終えるまで時間がかかった。最後に弟ホアが最初の場面と繋がって合わせ鏡のようになっているのだろうか。父エドガー・エンデの挿絵は19枚載るが、画家本人が認めなかったシュールレアリズムと分類された。父の死後18年経過してミヒャエル・エンデと父との共同作業として、永年に渡り物語を生み出したとロマン・ホッケがあとがきで述べている。禅の公案「鏡のなかに映る鏡には、なにが映るのか?」エンデが父の芸術が与えた影響を例えた言葉。
2022/12/15
秋風
エンデ生誕90年記念版。濃紺の布貼りで中央に銀色の鏡をイメージした豪華な装丁。30の物語が連続して進む。暗闇の中に散りばめられた物語を一つ一つ手探りでエンデの心の中を覗く様に文字を追っていった。前の物語と次の物語が微かに擦り合い、くっ付いてはまた離れて行き最後の話に繋がった。まるで歪んだ迷宮の中に迷い込んでしまった様で、もう少しこの世界に浸っていたかった。画家である父親の挿絵が想像の輪を大きく広げてくれた。
2019/12/08
まひる
哲学的で完全に理解しきれないのだけれど、何かが心に響いて、涙が出そうになる。わたしの中の何かが反応している。言葉にならない。後書きで父子の人生と創作スタイルを知り、驚いた。心の整理がついたら、じっくり味わう本【追加】私は私として産まれ、他人にはなれない。産まれたから、生きる。ただそれだけ。喜怒哀楽を感じるのはオプション。感じ方はオリジナル。善悪はない。
2021/02/23
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