〈家父長制〉は無敵じゃない――日常からさぐるフェミニストの国際政治
〈家父長制〉は無敵じゃない――日常からさぐるフェミニストの国際政治 / 感想・レビュー
Nobuko Hashimoto
フェミニスト国際政治学の第一人者による、日常にひろく深くはびこる家父長制についてのエッセイ集。家父長制のシステムにうまくはまる方法をみつけた女性には、たくさんの利得がある(中略)、だから頑強で、同時に驚くほど柔軟なのだ(p56-57)といった説明や、トルコ史において女性たちが粘り強く働きかけてきた参政権の付与が男性指導者の手柄にされた事例(第5章)など、いろいろ興味深い。女性の参政権は、実は小国や新しい国の方が導入が早かったりする。そのあたり少し深めたいと思っていたんだったなどと刺激を受けた。
2023/07/28
katoyann
家父長制をキーワードに女性差別に関する国際政治を分析し、フェミニズムの意義を解いたエッセイ的な研究書。自分自身の経験を綴りながら、フェミニズムが明るみにした性差別のメカニズムを記述している。家父長制は、男性が女性に対する支配の行使を可能にする権力的な関係性を意味する(明確な定義は示されていない)。これにより女性の労働の価値が貶められ、性差別賃金が生じる。ケアワークの低賃金はその一例である。国連の事務総長に女性が就任したことがないという事実も問題だ。だが性差別が相対化される時代は希望があるとする。良書。
2022/01/22
noko
日本の読者は実感していると思うが、家父長制は過去の遺物ではない。家父長制は日常的な性差別で女性蔑視を利用し、ジェンダー不平等を生む。持続可能な家父長制のシステムは、武力・暴力を終わらせる真剣な営みから女性を排除する。もし参加を認めたとしても最終意思決定の端に追いやる。意思決定に加われたラッキーな女性達の連携を乱す様な要求をする。交渉が行き詰まった時、男性化された武力を実行すると、家父長制は続いていく。日常の様々なシーンから家父長制を考えるエッセイ。ケアする仕事の人の低賃金も、この問題に繋がっている。
2023/05/01
ちり
“女性的だと考えられるものが、称賛はされても権限を与えられない場合、あるいは、国際システムの階層的秩序の下位におかれ、より女性化されていないとされる者の支配や搾取を受ける場合、そこでは家父長制が作用しているといえる”
2021/11/06
さたん・さたーん・さーたん
いつの頃からか、しかし確実に、この世の中の仕組みを支配する<家父長制>。著者自身の活動経験などを交え「特定の男らしさ」優位社会に挑む女性たちを描く。言い回しが冗長だが、そこで暴かれるのはその脆弱性を隠しながら変態する家父長制の絡まりつつも単純なルール。平等への道のりは長く険しく見えるが、ここまで来ると家父長制を保持したい男性は女性に対して根源的とも言うべき恐怖を抱いているとしか思えない。「理性的な」統治や政治を脅かす男と女の生物的関係、世代継承システムが本末転倒に捻れているのか。男性の言い分が気になる。
2024/06/30
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