紅葉全集〈第5巻〉小説 5 (不言不語 紫 冷熱 他)
紅葉全集〈第5巻〉小説 5 (不言不語 紫 冷熱 他) / 感想・レビュー
一人旅
この全集が出揃ッた20年以前の昔々、大枚はたいて取寄せてホクホクして本棚に奉りて満足して而して今日に至りての大たわけ、まさかにヤフオクで13冊揃7千円台の御代になるとは何とも辛いことじゃないか。 情けなくも紅葉をまともに読むのはこれが初めて、話としては他愛ないものが多いけれど、その彫琢刻苦の美文は誠に光彩陸離たるもので読中の多幸感は何ともいはむかたなし。 巻中にまるで二葉亭じみた二階青年の懊悩譚があって読ませるが、オチが黄表紙的突拍子のなさでその江戸にあらず近代にあらずの和洋雅俗折衷様式もつくづく面白い。
2019/10/21
感想・レビューをもっと見る