芥川龍之介全集 第4巻
芥川龍之介全集 第4巻 / 感想・レビュー
てれまこし
成績優秀で級長なんかをやってた芥川は優等生タイプらしいが、優等生には優等生の劣等感があって、耽美主義的悪への憧憬みたいのがある。谷崎潤一郎と自分を比較してる。美を描き出す彼の筆力を称賛しながら、その耽美主義がお大尽の贅沢のように楽観的なのを批判する。ポーやボードレールの耽美主義の底には苦しみがあって、その苦しみを自分は理解してる。冷酷な心を持て余し、切支丹ものに見られるように宗教的救済を求める心がある。だが、優等生の彼は谷崎のようには書けない。理知が邪魔をする。漱石的な罪の意識がつきまとう(「疑惑」)。
2023/11/24
入江
芥川龍之介がデビュー当時を振り返ったエッセイ。管弦楽団に刺激をもらおうとしたり、つまらない大学の講義中の様子があったり、大先輩の文学にいちゃもんをつけてみたり。友人である菊池寛の『藤十郎の恋』を読んで「言下ごんかに悪作だとけなしつけた」。しかし、本人が書いた小説も友人に読んでもらうと、書きたい病だから止めるがいいと勧められてしまう。タイトルは「羅生門」だった。夏目漱石に会うと緊張するというのも微笑ましい。
2017/06/06
鯉二郎
小説では、「蜜柑」と「毛利先生」が深く印象に残った。前者は、汽車に乗り合わせた田舎娘の振る舞いに苛立った主人公が、ある光景に心を打たれ娘に同情する話。後者は、生徒に嘲笑された代理の英語教師を卒業後に偶然見かけた主人公が、彼こそ本当の教育者だと感服したという話。他人を見かけだけで判断し、後になってその人の本当の良さがわかり、他人を侮蔑した自分に赤面する。そんな経験は誰にもあるだろう。随想では、盟友・菊池寛を慕う「兄貴のやうな心持」や、学生時代の交友関係を綴った「あの頃の自分の事」がおもしろかった。
2020/06/07
よしださいめい
「蜜柑」「竜」といった短篇が主なところ。短篇小説より、多くの随筆、寄稿文などを収録しているので、全集ならではの趣があり、知らない芥川龍之介の一面を垣間見ることができた。
2020/07/27
Sherlock Holmis
「大正八年六月の文壇」はあまり読んでいない。「邪宗門」、途中で終わったのは残念。一文単位で完璧に近い美しさを持つことにただただ驚くが、その繊細さゆえ長編を書き切れなかったのかもしれない。
2015/02/23
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