第2巻 普請中・鶏 ほか (鴎外外近代小説集)
第2巻 普請中・鶏 ほか (鴎外外近代小説集) / 感想・レビュー
ウイロウ
『涓滴』『烟塵』という二つの作品集を丸ごと収録。ほぼ全ての作が明治四二、三年初出だが、最後の「そめちがへ」のみずっと早い三〇年に発表されており、雅俗折衷文で花柳界を描いた内容も本巻にあって異色。全体としては「ル・パルナス・アンビユラン」「フアスチエス」「沈黙の塔」など当時の文学状況を鋭く風刺したものが目立つ。しかしそれらにも増して印象深かったのは、幼児二人をめぐる作者の実体験に取材した「金毘羅」である。ニヒリズムに陥った主人公さえも驚嘆させる、瀕死の娘茉莉(作中では百合)の体内に蠢くいのちの力。感動した。
2016/05/23
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