第3巻 仮面 灰燼 ほか (鴎外近代小説集)
第3巻 仮面 灰燼 ほか (鴎外近代小説集) / 感想・レビュー
ウイロウ
戯曲の分野においても鷗外は、翻訳と創作の両面で無視しえぬ貢献を果たしている。もっとも創作に関しては、本人の時間的な制約から一幕物が多く、また対話重視で動きに乏しいこともあり、舞台で観て楽しめそうな作品群とは思えなかった。結局アラビアの古伝説に取材した「プルムウラ」がドラマとして一番面白いのではないか。問題は未完に終わった小説「灰燼」である。伏線がほぼ全く回収されないのだから、未完といってよいだろう。敢えて性転換者(少なくとも差別的な取り上げ方ではない)を登場させた真意も確かめたかっただけに残念な気がする。
2016/05/25
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