第5巻 蛇 カズイスチカ ほか (鴎外近代小説集)
第5巻 蛇 カズイスチカ ほか (鴎外近代小説集) / 感想・レビュー
ウイロウ
鷗外は東大医学部卒業ののちドイツへ留学、帰国後は陸軍軍医のトップにまで登りつめた。傍目にはまことに恵まれた人生である。その彼が〈……舞台監督の鞭を背中に受けて、役から役を勤め続けてゐる。此(この)役が即ち生だとは考へられない〉という鬱屈を「妄想」(本巻所収)の主人公に仮託したのは、かなり意外だと思える。否、むしろエリートコースを歩んできたからこそ、悩みも一層深かったのか。知識も教養も万分の一以下の分際で、共感できるなどとは口が裂けても言えないが、とまれ私も〈真の生〉(「妄想」)を探し求めて本を読み散らす。
2016/05/29
感想・レビューをもっと見る