第6巻 かのやうに 雁 他 (鴎外近代小説集)
第6巻 かのやうに 雁 他 (鴎外近代小説集) / 感想・レビュー
ウイロウ
「雁」は全二十四章からなるが、『昴』誌上に連載されたのは弐拾壱までで、二年後に残りの三章が加えられた。結末のとってつけた感は断じて気のせいではないと思う。もし作者が主要人物の関係をあのまま発展させていたら、更にスケールの大きな、金と色を巡るバルザックばりのリアリズム小説になったのではないか。そう想像させるほど、老若男女の心理を鋭く抉り出す鷗外の筆の冴えはすばらしい。最後に収められた「本家分家」は、近松秋江のモデル小説に反駁すべく書かれた自伝的作品。鷗外=反自然主義という文学史の常識は事実の一面でしかない。
2016/05/31
感想・レビューをもっと見る