坑夫 三四郎 (定本 漱石全集 第5巻)
坑夫 三四郎 (定本 漱石全集 第5巻) / 感想・レビュー
ぐうぐう
漱石の長編の中でも、認知度が低いであろう『坑夫』。確かに地味な印象だが、あちこちに漱石の企みが伺えておもしろい。女性関係のもつれにより、生きる意味を見出せない主人公が、言われるがままに誘われ、坑夫になるという物語。このどこか投げやりな展開がまず気になる。主人公に対し、漱石がなんとなく突き放した印象を受けるのだ。それもそのはずで、見知らぬ青年の体験を聞いた漱石が小説にしたのだという。思い入れが薄くて当然だ。それでもおもしろく読めてしまうのは、漱石特有のユーモアと、この小説自体に仕掛けがあるからだ。(つづく)
2017/05/13
sashawakakasu
とても親切な注解があり読みやすかった、編集部の漱石愛が感じられた。海辺のカフカから坑夫を読みにきました、読んでて気分が暗くなりました。三四郎は2回目でしたが、1回目より楽しく読めました。独身男性たちに好感がもてた。「能くってよ、知らないわ」このセリフ何かいいね。
2022/05/01
hasegawa noboru
三四郎に出会った時の最も美しい自分を「画」の中に封じ込めて明治男流社会に掉さそうと決意する美禰子と人生に「詩」を求めて帝大生活を始めたばかりの高等遊民候補三四郎。同じ二匹のストレイシープであっても二人の恋はすれ違いに終わるばかりだった。漱石が持つ、きわめて倫理的近代的恋愛観が基底にあっての美しい哀切な青春文学である。約半世紀ぶりの再読は初読に等しい。場面や会話が示すシンボリックなもの等の理解が難しくもっと物語的なものを期待したのだろうな、あの頃は。昭和五十年二刷刊行の全集本で読んだ。
2020/11/17
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