イシ: 二つの世界に生きたインディアンの物語
イシ: 二つの世界に生きたインディアンの物語 / 感想・レビュー
yumiha
カリフォルニア・インディアンのヤヒ族最後の一人だったイシ。同じ藪の中の生き物として他の動物たちがイシたちを警戒せず、鳴き真似をすれば寄ってきた暮らしが、うらやましい。「鹿狩り」の前の儀式や「とり入れの祝い」の様子、ドングリのお粥なども興味深い。でも、滅びてしまったヤヒ族だとすでに知っているので、イシの家族たちの最期がむごい場面では…という懸念でおそるおそる読み進む。解説によれば、作者シオドーラ・クローバーが少年少女用に書き改めたのが本書のようで、大人用(?)ではむごい場面があるそうな。読み直すべきか?
2020/10/21
シュシュ
しばらく余韻に浸りたい。著者がゲド戦記の作者ル・グウィンのお母さんだと知っていたせいか、ゲド戦記の雰囲気を感じた。少年イシが岩の上で夜明けの時間を過ごすところが好き。秘密の場所があることが羨ましい。ヤヒ族では秋は、harvest。夏は、暑熱の月。「峡谷が火穴のようにほてり、夜じゅう、風もなく蒸しむししても、ぶつぶついう者はいなかった。この猛暑もまた、生きるということの一部であった。それは春のときと収穫のときのあいだ、狩と魚捕りと採集に明け暮れる日長、夜長のあいだにはさまる、休息のときであったのだ」→
2016/05/06
フム
「思想をつむぐ人たち -鶴見俊輔コレクション1 (河出文庫)」に、このカリフォルニア・インディアン、ヤヒ族の最後の一人となったイシのことが印象深く書かれていた。ゴールドラッシュに沸く北米で金鉱を求めて入ってきた白人達に殺されたり、土地を追われ滅んでいくヤヒ族、数人の仲間が知恵と確かな信仰の元に原始的なヤヒ族の生活と生き方を守り抜く。最後の一人として晩年カリフォルニア大学の博物館をワトグルワ(家)として生き抜いたイシ、その思考の柔軟性と万物を受け入れる哲学に深く感動した。
2019/05/03
カラスノエンドウ
北米に実在したイシの物語。若者達が成長し、均衡が崩れる辺りから一気に引き込まれました。前半のヤヒ族の描写が長く感じましたが、彼らの暮らしを理解するのに必要なパート。だからこそイシが最後の一人となる場面にハラハラ。言葉が通じず風習も違う人と人とが、静かに心を通わせていく姿に心が動きました。イシの人生や米国の歴史と現在に思いを巡らせて、読後の余韻に浸っています。
2020/11/14
スウ
カルフォルニア・インディアンの一部族、ヤヒ族最後の一人となった実在の人物イシの一生を描いた本。ほとんどを白人に殺され土地を追われたヤヒ族は、谷間にひっそり暮らしていた。前半はイシの少年時代から、たった7人の素朴な生活が綴られるが、白人から隠れる緊張状態での暮らしはどんどん過酷になっていく。途中、あっけなく身内が亡くなっていく様は悲哀に満ちており、人間が人間の一種族を絶滅させた歴史が胸に迫る。衰弱した状態でたったひとり、白人に発見されたのが1911年のことだった。
2020/04/21
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