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サーカス物語

サーカス物語

サーカス物語

作家
ミヒャエル・エンデ
司修
Michael Ende
矢川澄子
出版社
岩波書店
発売日
1984-07-13
ISBN
9784001109870
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サーカス物語 / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

サーカスを舞台にしたエンデの戯曲。読んでいて、胸が熱くなった。愛にあふれ、自由に生きること。流されて生きるのではなく、何かを創り出すこと。祈りにも似たエンデの想いが胸に響く。昔からエンデは一番好きな作家の一人だったが、これを読んでますますその気持ちが強くなった。サーカスの団員たちは現実の世界では、無力な存在でしかない。しかし、幻想の世界に旅して悪と戦って、もう一度こちら側に戻ってくる。それが描かれているエピローグには緊迫感がある。彼らは現実に負けてしまうのだろうか。決して負けないと思わせてくれる力がある。

2017/07/01

(C17H26O4)

戯曲。司修の画がすごい。くすんだクリームイエローを背景に像の際立つ紺色で描かれている。どこか物悲しい。版画にも見えるがどうだろう。登場人物ひとりひとりの紹介の画から始まり、開演を今かと待つように引かれた幕の画、そして幕開きの画と続く。挟まれる場面場面が描かれたものもどれも印象的で心を捉える。文字色の紺色、全てのページ下部に帯のように刷られている画も全体の雰囲気を作っている。明日にも建設現場となる空地からの立ち退きを迫られ、廃団に追い込まれているサーカス一団の物語。社会のあり方を問う、愛と自由と創造の物語。

2022/05/25

雪うさぎ

劇中劇が大団円を迎えるとき、エピローグはプロローグとなり、厳しい現実に戻ります。物語の背景にあるのは環境汚染の問題です。弱者には二つの選択肢しかありません。その地に残るや残らざるかやです。決断を下すとき、自分の心に鏡を照らす必要があります。自分の持ちもののなかで、一番美しいものは何でしょうか。それは良心だと思います。知恵遅れのエリのまっすぐな眼差しがそのことに気づかせてくれます。偽りで着飾った姿のなかに、本当の愛や平和はあるでしょうか。エンデは言っています。愛の欠けた国に未来はないと。

2016/02/23

なる

時代に取り残され立ち退き寸前のサーカス団。立ち退き直前の真夜中、劇中劇という形で王子と王女の物語が進む。司修による挿絵や装丁、幕間まで効果的な演出を施されていて実際に舞台を観るような気持ちに。ナイフ使いのヴィルマやエリなんて少女も登場する。『からぶりサービス』じゃなかった『からくりサーカス』を彷彿させると思っていたら実際に作者の富士鷹じゃなかった藤田和日郎先生も愛読していた作品。『モモ』や『はてしない物語』に比べると少しさびしい話かもしれないけれど、あの大風呂敷を広げた名作の礎とあれば読まない手はない。

2022/04/18

井月 奎(いづき けい)

知恵おくれのエリは、自分を見捨てれば仲間のサーカス団員の経済状況が好転することなどは露知らずピエロのジョジョにお話しをねだります。エリを女王に、ジョジョをジョアン王子に仕立てた壮大な物語です。現実の彼らはため息をつきながら悩み、苦笑いとともにエリを選び、経済的援助を約束する契約書を破り焼きます。躍動感あふれる物語でエリの心をあたためて、ひもじい思いを覚悟して、うなだれて意気消沈している彼らはエリとの生活を選び一人にはさせません。力なき彼らの新しい一歩が力にあふれていることを願い、信じつつ本を閉じました。

2015/09/28

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