エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18)
エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
初読だとばかり思って読み進めていたが、大事なお金をピンでとめるところで、子供時代に読んだことを思い出した。そうすると、一気に懐旧の思いが込み上げてきた。自分にはケストナー体験はないと思い込んでいたが、実は密かにケストナーの洗礼を受けていたのだった。大人になってしまった今では、残念なことにその都度ハラハラできなくなってしまったけれど。思えば、あの体験こそ読書の原体験の一つだったのだ。そんなことを思い出させてくれる貴重な物語である。もちろん、今もその生命を失ってはいないだろう。
2024/10/15
徒花
まあまあ。ドイツ児童文学の名作。お金に余裕のない母子家庭に育つエーミールがベルリンに住むお婆さんのところに一人で旅行に行く途中、泥棒に持金を奪われてしまったので、街の子どもたちと協力してそのお金を取り戻そうとする物語。特段、ストーリーとか設定にひねりがあるわけではないけれど、サラサラと読み進めていける。冒頭の文や劇中にさりげなく自分を登場させるあたりには著者のユーモアが感じられる。
2022/11/12
seacalf
ああ、読んでいるだけで幸せ。さすが名作の誉れ高いケストナーの代表作。ベルリンに向かう途中で災難に見舞われたエーミールは都会の少年達に出会い追撃を開始する。てやんでいのグスタフ、的確な采配を振るう教授、ちびのディーンスターク、みんなをどぎまぎさせる格好いい従姉妹のポニー・ヒュートヒェン、個性的な子供達がそれぞれの持ち味を活かして一致団結して事を運んでいく様子の描き方の上手いこと。探偵たちが揃ったところからぐっと高揚し、生き生きした少年たちのやりとりを見守るだけで大きな多幸感に包まれる。素敵な読書体験だった!
2023/12/05
Willie the Wildcat
愚直で、純粋な心が道を拓く。根底に、母親への愛情と感謝。仲間の存在のありがたみ、特に、陰で貢献したディーンスタークへの賛辞が印象に残る。”バイン”や著者の登場など、所々に散りばめられた著者の遊び心も微笑ましい。江戸っ子風の口調や時に畏まった序文など、不思議と違和感がない。訳者の”腕”ですね!(笑)
2014/10/16
アキ
ケストナー1928年作の児童文学。エーミールはベルリンを初めて訪れた興奮も、汽車の中で母親から渡された虎の子のお金をすっかり盗まれて、街を眺める余裕もない。クラクションのグスタフが声を掛け、仲間と共に犯人を追い詰めるやり方が愉快で痛快。新聞記者ケストナーさんが食べさせてくれたのが、ホイップクリームたっぷりのサクランボケーキ。警察署に行く車からブランデンブルグ門や街並みをゆっくり眺め、仲間たちにマルタおばさんがふるまったのはホットココアとアップルケーキ。1930年映画化された。ヒットラーが首相になる3年前。
2020/06/06
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