点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫 60)
点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫 60) / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
人として大切にしたいこと。時に厳しく、時にユーモラスに、人生の教えを説く。発刊の年代を確認して納得感。恐慌下、貧富の差や、国家間の暗澹たる空気を背負う・・・。印象的なのが、「自制心」。心の揺れは、年齢に関係ない。大人が悩み苦しむ姿も、子供には人生の糧となることもある。一方、「嘘」。総論はOKも、各論に違和感。『嘘も方便』、という諺もある。時に、心を和らげる潤滑油にもなる気がする。背景の”心”次第ではないかな・・・。
2013/12/21
めしいらず
言いたいことと、言っちゃいけないこと。やりたいことと、やりたくないこと。そして時々私たちを試すように現れる、言わなくちゃいけないことと、やらなくちゃならないこと。子供も大人も変わりない。トラブルの回避や様々な制約に搦め捕られ動きがコチコチの大人と較べ、子供の身のこなしは柔軟だ。いつでも周りの雑音に邪魔されずに、自分の心の声を聞くことができるから。互いを敬い、誇り、相手の苦境に出し惜しみも打算もなく立ち回る主人公2人の魅力たるや。点子ちゃんと飼い犬ピーフケのコントみたいなやり取りに思わず笑みがこぼれる。
2016/12/09
たつや
ケストナー作品は既読が3冊なのでこれで4冊目ですがまだ、ファンではありません。でも、評判通り、これは面白い本でした。まえがきはオチャメなケストナーという感じで、読みやすく。日本で例えるなら「ちびまる子ちゃん」や「サザエさん」のような、ほのぼのギャグ満載でほんわか笑えました。ハゲ頭に顔が写るか?とか、マッチを売る練習は点子ちゃんが動いて見えました。でも、ナチスドイツ軍がはびこるあの時代に、よくこれを書けたなと感心します。当時の子供やケストナーの心を思うと心中複雑です。
2017/01/11
metoo
大金持ちの社長の娘の点子ちゃんと、病気の母親と二人暮らしの貧しいアントンとの友情の話。私が子供なら読後の感想として、「点子ちゃんのママは育児放棄し他人任せで、パーティ、オペラ、お出かけばかり。そんなママにパパは何故何も言わないんだろう。点子ちゃんが可哀想だわ」と真っ先に口を尖らすだろう。しかし著者はママを責めるのではなく、ママに対して「心が広すぎる」パパを批判する。パパのママに対する「ばかやさしさ」がいけないんだと。心が広すぎるということについて尊厳をもって読者に語りかける所がとてもいい。
2017/05/05
ぶんこ
点子ちゃんはお金持ちの家の一人っ子。そしてアントンは貧しい家の病弱な母との二人暮らし。点子ちゃんの母は育児はせず。住み込みの養育係は、よからぬ恋人がいて、点子ちゃんを使って物乞いをし、恋人にお金を渡すような人。点子ちゃんは想像力が豊かで、物乞いも遊びとして楽しんでいる。アントンは母思いで真面目で賢い子。アントンを友だちに選んだのは点子ちゃんグッジョブ。章の終わりに「立ちどまって考えたこと」があり、勇気と蛮勇は違うなどが説明されています。この本がナチス台頭の頃のベルリンを舞台に描かれたというのが驚き。
2024/04/21
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