ベルリン1945 はじめての春(上) (岩波少年文庫 625)
ベルリン1945 はじめての春(上) (岩波少年文庫 625) / 感想・レビュー
ケイトKATE
第二次世界大戦におけるドイツの敗戦から、『ベルリン三部作』の完結編である第三部が過酷な内容であると覚悟していたが予想以上だった。第三部はヘレの娘で12歳になった主人公エンネが、祖父ルディと祖母マリーと一緒に連合国軍の空襲から逃れる様子から始まる。度重なる空襲は、ベルリンの人々を厭戦気分にさせヒトラー支持者の人間も変節するほどの激しさだった。そんな死と隣り合わせの中で、エンネはそれまで知らなかった真実を知ることになった。父ヘレが政治犯として強制収容所にいること、母のユッタがナチスによって拷問死したことを。
2020/07/20
しゃん
このベルリン3部作の1945年は、ヘレの娘であるエンネが主人公。1919年、1933年からこの1945年に至ってゲープハルト一家はますます社会の渦に飲み込まれていく。ベルリン陥落の実態がこんなにも悲惨なことだとは全く知らなかった。言葉で簡単に表現できないほどの惨状。市街戦のおぞましさ。戦争に勝者はない。この上巻を読んで、「強圧、略奪、追放、悪意、支配、ひどすぎる」といった佐野元春のShameの歌詞を思い出した。下巻、とうとう最終巻へ進む。
2020/10/10
ぐみべあ
ベルリンがソ連軍に降伏しても戦争は終わりではなくて、ソ連兵による射殺、女性への暴行、財産の略奪など、痛ましいできごとが続く。「やめてくれ」と懇願しても、「ドイツ軍もソ連で同じことをしたからその報復だ」と。戦争とはこれほど過酷で、国々はこれほどまで憎み合い、その憎しみが次の戦争を生むという連鎖が起こっていたのだとわかった。ソ連やドイツが残酷だという話ではなく、他の国(日本も含む)も同じような侵略、略奪を行なっていたのだろうと考える。
2020/11/14
かもすぱ
ベルリン三部作の第3部上巻。またも主人公は交代して、第1部の主人公であるヘレの娘12歳のエンネの視点で、ベルリン陥落目前から物語が始まる。熾烈な空襲・爆撃の息苦しさの描写が続き、空腹と消耗が繰り返される。全てが終わることを望み、終わったそばからソ連軍の簒奪でまた擦り減る。戦闘が終わっても生活が即座に薔薇色になるわけもなく、あくまでも生活は地続き。前作までの登場人物の若い男はだいたい死んでる...。誰もが言い分を持っているけど誰も正しく在れない時代なのか。
2021/05/23
まこ
ヘレ、ハンスに比べてエンネは子ども扱い。戦局が悪化して事情を飲み込めないこともあったのか。そこから家族の秘密を知っていく姿は1933のラスト以降を知らない読者と重なる。政治や革命より家族が大事ではないのか、ヘレとハンスも思っていたけど、ハッキリと言わなかったことをエンネは言った。戦争終わったかよくわからない状況でエンネの主人公としての役割がわかってきそう
2022/06/19
感想・レビューをもっと見る