賢者ナータンと子どもたち
賢者ナータンと子どもたち / 感想・レビュー
ゆにす
舞台は第3次十字軍の時代のエルサレム。キリスト教徒の支配下にあった聖都がサラディン(イスラム教徒)により再征服されたとき。ユダヤ人の商人ナータンはキリスト教徒に妻と7人の子どもを虐殺されたのに、キリスト教徒の赤ん坊(女の子)を神の賜物として喜んでひきとり、大切な自分の娘として育てます。彼の家には、イスラム教徒もキリスト教徒も出入りします。偉大な支配者サラディンさえも、彼が賢者であることを認め、友情さえも生まれます。歴史的背景の理解と、宗教的知識が必要とされます。
2012/03/02
まほ
「賢者ナータン」という戯曲のリライト?手引書みたいなものだそうです。戯曲は未読ですが、こちらは面白くかつ美しい物語。 つくづくエルサレムってすごい街だな、と思います。相反する信仰や価値観をもつ人々が隣り合って暮らしていて。当時はその上にサラディンが君臨しているわけですが、彼が征服後エルサレムに集う各信仰を侵さなかったからこの街は危ういながら均衡を保たれていたのですね。そしてその街で育つ子どもたちは…。 結局宗教というのは、個人にとっては、自分がどこから来てどこへ行くのかという人生の標みたいなもの。
2012/01/28
putisiyante
これも日本人には、理解出来ない宗教の話。戯曲、賢者ナータンを分かりやすく小説にしたもの。三宗教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教をヤータン、娘のレーハなどの考え方、話すこと、行動で上手く説明している。
2012/08/21
naonchi
レッシングの「賢者ナータン」をYA向けに小説化。章毎に登場人物一人ずつ語らせるなど従来の戯曲から大きく離れ大胆に改作。ただし「賢者ナータン」を一体どれだけの人が知っているのかっ?民族紛争も宗教対立も、海外ニュースでしか知りえない子供にとってはハードル高いかなぁ・・・NGOや海外ボランティアに興味を持った子供たちにはお勧め。日本で例えれば「三本の矢」のお話が「三つの指輪」物語として語られるところが面白い。
2012/07/13
ティパリン
戯曲「賢者ナータン」は全く知らないが、子供向けに小説化したこの本は読みやすかった。キリスト教もイスラム教もユダヤ教も、神に奉仕するために隣人を愛し善行を積むことは同じだという。なのになぜ、殺し合いが起きるのだろう。宗教が原因の紛争は今もある。ナータンは言う。「私には夢がある。いつの日か、人類が迷いを超越し、宗教が与えられた真の意味に気づく日が来ることだ」「けれども、それはただの夢にすぎない。現実はべつのものだ」理想と現実が重い。
2013/09/27
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