都市ヴェネツィア: 歴史紀行 (同時代ライブラリー 20)
都市ヴェネツィア: 歴史紀行 (同時代ライブラリー 20) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者のフェルナン・ブローデルはアナール派歴史学の泰斗。著述は数多くあるが、その代表的なものが『地中海』。そんなブローデルによるヴェネツィア案内がこれである。ブローデルは言う。誰にとっても、それぞれに固有のヴェネツィアがあるのだと。訪れた時期や季節によっても、また時間によってもヴェネツィアはその姿を変えるだろう。運河に架かる橋は400を超えるそうだが、最も有名かつ優美なリアルト橋にしてもそうだし、それはほとんど知られることのない橋や裏通りにしてもそうだ。ああ、だめだ。こんな字数ではとても魅力を語れない。⇒
2020/11/25
roughfractus02
著者の「動かない歴史」では、地勢と気象の変動をプロットされた空間に少しずつ交流のトラフィックが書き込まれ、ネットワークされ、ハブができては移動する様子が俯瞰される。一方、この著者が海上貿易都市ヴェネチアの写真とともに語ると彼の不動の歴史は「生きている過去」に姿を変える。現在と混じり合う過去は、その長期の変動を豊穣な情趣を滲ませるように光景の内側から蠢かす。著者の言葉が詩的になるのは、この動かぬ過去の蠢きを言い尽くさないためか?聖マルコと獅子の物語は遠方交易のざわめきや仮面劇の祝祭と共に写真の今を滲ませる。
2020/06/20
belier
高名な歴史学者がヴネツィアの歴史を詩情豊かに語る。訳がすばらしいと思ったら、プルースト「楽しみと日々」の翻訳者、岩崎力氏であった。撮られた時代を感じさせるような写真が多くてそれもいい。
2017/04/09
ろべると
ヴェネツィアさんの読後感想を読んで本書を知り、古書で購入。私がヴェネツィアに行ったのは、本書が出版されたのと同時期の1985年で、張り巡らされた水路とともに、迷路のような路地を彷徨った夜の印象が強烈で、以来憧れが減じることはない。市民の人口減で生活が失われつつあることを著書は懸念しているが、30年以上が経った現在はどうなのか、“死”のイメージが拭い難いヴェネツィアだが、すっかりテーマパーク化したと思われる現在、かつてのようにしぶとく生き続けていることを願って、今年再訪する予定だったが果たせなかった。残念。
2020/12/02
PETE
経済史の巨人でなければ書けないヴェネツィア論。まだ単なる干潟の集まりだったころからの気象や他国との戦いの事情が折にふれて明らかにされるとともに、作者も含むヴェネツィアに魅せられた人々の印象も明らかになる。写真も往時のようすをくまなく写し取っていて素晴らしかった。街の地図がついていなかったのには苦労した。 ちなみに、『地中海』か、『物質文明・経済・資本主義』のどちらかを読んでから読む本だと思う。
2018/12/11
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