文学部唯野教授 (同時代ライブラリー 97)
文学部唯野教授 (同時代ライブラリー 97) / 感想・レビュー
James Hayashi
大学内での権力闘争やら、文学部での授業など興味深くはあるが、自分の身を置いている世界とは隔絶していると感じさせる。文学部の授業など難しく尊敬に値するが、構造主義やら批評、解釈学とか自分には何のことやら。まあ、ストーリーが確立しているのでパロディ的な展開は面白い。文中に挙がったいくつかの作品は今後読んで見たい。
2017/07/23
tom
大昔に読んだ。面白かった記憶があり、10年ほど前に100円で買ってきた。途中まで読み、現象学とか解釈学のあたりで投げ出す。そして、積読本消化月間ということで取り出した。あっという間に読み終える。面白かった。各種哲学の説明は絶品だと思う。フッサール、ハイデガー、メルロ・ポンティなどなど、そうでしたかとは思う(読みこなす能力はないのだけど)。でも、こういった理論に基づいて小説を読む、そんな無駄なこと、誰がしますか。本は楽しませてもらえれば十分。どうして面白いのか、楽しいのかと、理屈を考える徒労なんて・・・
2023/01/15
giant_nobita
唯野が芥兀賞(ちなみに「芥兀賞」という賞は筒井の『大いなる助走』にも出てくるという)受賞騒ぎで大学内の人間に兼業作家であるという素性がバレるまでの顛末が主筋といえるが、その他にも様々な話の筋が大学の文学部という狭い舞台でスラップスティックに展開する。しかし唯野の非常勤先での文学理論講義は、唯野が所属する大学で展開される物語とまるで関係がないかのように語られる。講義に出席する学生から見た唯野と、唯野から見た唯野という違いを描いていると読むのは浅すぎるだろうが、この語り口の相違は作品の急所であるように思う。
2017/06/06
たんたん麺
「文学作品というものは、そんな風にして、まるで意味さえわかったらそれでいいんだみたいに簡単に消費してしまえるもんじゃありませんでした。同じ本を二回読んで、別の意味を見つけたりすることもあるんだものね。あっ。それから言っとくけど、作者だって、自分の作品の理想の読者にはなれません。解説できないようなこと、既成の何かの枠の中では書けないようなことを小説にして書いてるわけだから、作者が自分の作品を解説しようとしたって、それはもう小説ではないわけだし、その立場は批評家とあまり変わりません」
2014/09/15
ふたし
大学内部のパロディを書きつつ、講義を模して文学批評の解説をするという、知的好奇心をめちゃくちゃ刺激してくれる作品。
2020/08/30
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