好色五人女 (岩波文庫 黄 204-4)
好色五人女 (岩波文庫 黄 204-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルの「好色」は、現代語では恋愛くらいの意味。つまり、恋愛に生きた五人の女たちということだ。ただし、この時代の女にとって、自由な恋愛は「恥」、「いたづら」と西鶴が語っているように、それ自体で既に不道徳なものであったのだが。物語集全体は五巻五章に拘ったために、構成上無理を来しているが、それでも巻三のおさんなどは、きわめて現代的な女性として描かれている。文殊菩薩の戒めをも決然と退け「こちゃこれが好きでの脇心」と自らの主体を貫く強さ。江戸時代人を遥かに超越して、見事だ。江戸文学全体の中でも自立度は超弩級。
2015/01/17
ykmmr (^_^)
どの時代の人も、『美形』な人には優しいし、弱い。元禄文化の流れもあるとは思うが、西鶴もそんな人人なんだろう。美しい女性を何というか…イヤらしい 笑。そして、この時代と言える『浮き世』。分野は違えど、近松と良いコンビなんだろう。歌舞伎を観に行くと言う密かな夢があるが、こう言ったものを観る機会もまた欲しい。絶え難い、日本の文化。
2022/05/03
新地学@児童書病発動中
難しいと思って、今まで敬遠していたのだが意外に読みやすかった。主語と述語がはっきりせず、長い文が続くので最初は閉口して読むのをやめようと思ったのが、我慢して読んでいたら頭の中に入るようになった。現実的で非情な結末に至るものが多いのだが、三巻の一や四巻の一のように叙情的な文章が所々に散りばめられており、文章家としての井原西鶴の手際を味わうことができる。三巻の「姿の関守」での京都の女達の描写は、色鮮やかで艶めかしく溜息が出るような美しさだった。この小説は題で損をしているようなところがある。(続きます)
2017/12/27
かふ
井原西鶴は俳諧の達人で一夜に2万3千5百句作るほどの自動文章生成機みたいな人で、七五調の文体は気持ちよく読めますが、理解が遠い。それは江戸時代の町人文化の流行りものが描かれているからだと思います。岩波文庫は字も小さいし。素直に翻訳物を読んだほうが理解が早いと思います。ただ江戸諧謔の戯作文体は面白い。エロ話が多いというか江戸時代の方が性は解放されていたかも(男にとってか?男色も)。ここに登場する女たちは悲恋(不義密通は極刑)ですけど。
2024/02/02
ダイキ
三島由紀夫が『日本人として生れて近松や西鶴がすらすら読めないでどうするのだ』といった事を書いている事を知り長らく積んであったものを読みました。芭蕉の有名な評は今の私にも何となくながら解ります。「やうやう其程過て、色々たらして、ねせまして、語たき事ながら、ふすま障子ひとへなれば、もれ行事をおそろしく、灯の影に硯帋置て、心の程を互に書て、見せたり、見たり、是をおもへば、鴛のふすまとやいふべし、夜もすから書くどきて、明かたの別れ、又もなき恋があまりて、さりとては物うき世や」〈巻四 恋草からけし八百屋物語〉
2017/02/27
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