本朝二十不孝 (岩波文庫 黄 204-6)
本朝二十不孝 (岩波文庫 黄 204-6) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は貞享3(1686)年の刊行なので、西鶴の浮世草子作家としての出発であった『好色一代男』の4年後であり、比較的初期の作風をとどめている。その最たるものは、これもまた「諸国咄」であること。巻1の第1話は京の都から始まるが、加賀、駿河、宇都宮から果ては松前、長崎と諸国を舞台に物語は展開する。もっとも、お話の内容はその土地との結びつきを持っているわけではない。主人公は、巻2の第1話の石川五右衛門だけが現代にまでその名を残しているが、他は無名(当時は知られていたかもしれない)の者たちである。共通項は当然⇒
2022/09/18
しんすけ
三島由紀夫が『不道徳教育講座』を書いたのは本書に誘発されたのが大だったようである。 とにかく本書が語る親不幸は相当なもので「自分なんかは相当な親孝行だと思われてくる。そしてまず、自分を親孝行だと思うことが孝行のはじまりですから、こういう本はなかなか益があることになる」と三島は書き『不道徳教育講座』を開始したのだった。 本書は親不孝が満載だ。そして親不孝した本人は、事故死や餓死、さらには死刑になっている。「不道徳教育」は「道徳教育」の別称である。
2022/09/09
ミコヤン・グレビッチ
先行する複数の「二十四孝(にじゅうしこう)」説話集を踏まえつつ、「二十四不孝」ではなく語呂を重視して「二十不孝(にじゅうふこう)」としたセンスが良き。親不孝者が天罰を受け、たいがいは無惨な末路をたどるというエグい話が続くが、色恋沙汰抜きの奇譚を主とした本書なら、「好色ものはちょっと…」という向きでも楽しく読めるのではなかろうか。舞台は全国各地にわたり、当地の社会事情を織り込んだ話も多い。各話一点の挿絵は想像を補うのに役立ち、解説も通り一遍ではなく、一部の話の物足りない点にはしっかり突っ込んでいて興味深い。
2023/06/06
コノヒト
エンタメ読み物であるところの浮世草子ということであれば、孝行息子の話を聞かされるよりも、親不孝者を題材に取った方が、面白くなるに決まっている。挿し絵も良い。補注もトリビア的に読み出がある。
2015/03/17
こひた
教説を反対から見てみるという発想。言われてみれば古典の教訓って現実味がさらにないし、本作の影響で三島由紀夫が「不道徳教育講座」。死に一倍(生命保険借金殺人)。詐術。ネグレクト。
2016/07/26
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