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芭蕉紀行文集: 付 嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1)

芭蕉紀行文集: 付 嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1)

芭蕉紀行文集: 付 嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1)

作家
松尾芭蕉
中村俊定
出版社
岩波書店
発売日
1971-11-16
ISBN
9784003020616
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芭蕉紀行文集: 付 嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

4つの紀行と「嵯峨日記」を収録。「野ざらし紀行」は、紀行とはいうものの、やや長めの詞書を付した発句集といった趣き。もっとも「野ざらし紀行」は通称で芭蕉自身がそう名付けたわけではないが。冒頭の句もいいが、やはり最も目を引くのは「猿をきく人すて子にあきのかぜいかに」だろう。「海くれて鴨の聲ほのかに白し」他、名句の宝庫。「笈の小文」も中盤では息切れするものの、冒頭と末尾には芭蕉の強い意気込みが感じられ、ことに「風雅」を標榜するあたりには芸術観と俳諧にかける覚悟が見受けられる。句は「行春に…」か「若葉して…」か。

2017/07/13

かふ

「野ざらし紀行」は西行の影響をうけて深川隠棲するのだが40歳ににして自身の俳諧を生活のためではなく(宗匠として流行りの俳句を詠んで生活してきたが)人生のための俳句を目指したのである。そこに西行の生き様(風狂)を見出す。芭蕉は漢詩や物語・日記から和歌まで古典の雅さの中に、江戸町人文化である俗を対置させた。「野ざらしを心に風のしむ身哉」 蕉風が完成したのはこの頃だという。そして「おくのほそ道」までの旅の記録なのだが姨捨山まで月を見にいった「俤(おもかげ)は姨ひとりなく月の友」とか印象に残る。

2024/06/07

しんすけ

芭蕉といえば『おくの細道』が有名だが、ここに所収された『野ざらし紀行』と『更級紀行』には、もっと惹かれるものがある。 『おくの細道』は大成した芭蕉の枯山水の風雅を感じるが『野ざらし紀行』と『更級紀行』は、人間芭蕉の生々しい声が聴こえるからだろう。 下記は『更級紀行』の一節。 仏の御こゝろに衆生のうき世を見給ふもかゝる事にやと、 無常迅速のいそがはしきも、我身かへり見られて、 あはの鳴戸は波風もなかりけり。

2022/09/02

広瀬研究会

「百骸九竅(ひやくがいきうけう)の中に物有」という『笈の小文』の序文に惹かれて読みました。正直しろうとには手の負えない内容だったけど、芭蕉の芸術の片鱗をほんの少しだけ味わえたかもしれないな。

2019/05/02

月音

先に読んだ吉井勇の歌集に『野ざらし紀行』などの名がみえ、急に再読したくなった。冒頭から荒天で富士山が見えなかったと詠んでいるのに感嘆する。古来より富士の名歌は数あれど、「見えなくて面白い」とは斬新。須磨といえば秋なのに、夏の月を詠むのも同じく。他方、吉野の桜で一句のところ古人の名歌を思い出して口をつぐむばかり…、でも実はちゃんと詠んでたと。あえて定番を外すか、虚構で演出効果を上げるか。私的な旅の記録に見えて読者を想定しているのは、俳句とは別にではなく俳句を含めた総合的な新しい表現を探っていたのだろうか。

2024/10/26

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