おくのほそ道: 付 曾良旅日記 奥細道菅菰抄 (岩波文庫 黄 206-2)
おくのほそ道: 付 曾良旅日記 奥細道菅菰抄 (岩波文庫 黄 206-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
古典文学には紀行の名品が揃っているが、多くの人が第1に思い浮かべるのが『おくの細道』。芭蕉の旅の目的はおそらく一つではなかっただろうが、深く敬愛する西行の跡を辿ることによって、陸奥の歌枕の地に自ら立つことがその一つ。ただし、西行自身は当時の歌壇にあっては革新派だったが。そして、伝統に立脚しつつも、そこに新たな美を発見するということもあったに違いない。「月日は百代の過客にして…」と格調高く語りながらも、「もゝ引の破れをつゞる」のが俳である。極め付きが「蚤虱馬の尿する枕もと」。和歌的な美には絶対にない世界だ。
2014/03/05
i-miya
2014.02.18(02/18)(再読)萩原恭男校注。 02/17 (カバー) 人生を「旅」と観じ、自己の生活をそのまま芸術と化した「風狂」の姿。 紀行文の形を取りながらこの一書に自らの俳諧の到達点を示そうとしたのであろう。 (1)美しく味わいの深い文章、(2)構成の巧み、(3)芸術精神、(4)「幻術」の世界。 (解説=萩原恭男) ◎『おくのほそ道』までの芭蕉。 「旅の詩人」、「漂泊の詩人」、そのさすらいは主君良忠の死に始まる。 良忠は、北村季吟に師事。 俳号を蟬吟(せんぎん)と号す。
2014/02/18
syaori
「弥生も末」に始まる奥州行は、道に迷ったり持病が出たりと危険で苦労が絶えないものだったことが窺われますが、読み終えた後に残るのは、艶で風雅な旅だったという思いばかり。作者は白川の関で古の歌人を追懐し、平泉では杜甫を引いて藤原三代の栄華を語り、那須や小松で『平家』に思いを馳せるというように、現実の風景に和漢の典籍を踏まえたあわれや美を付与していて、それが本書の魅力になっているように感じます。そういう意味でここに書かれているのは日本人のポエジーに訴える幻の旅で、その美意識を心ゆくまで堪能する旅となりました。
2019/02/01
金吾
情景が浮かびやすいということは紀行文として読みやすいという特徴とやはり俳句が土地土地をイメージしやすいものなのだろうなと感じます。また旅行したときに芭蕉の句碑を読むとわからないなりにわかったような気になります。
2022/10/04
うた
芭蕉翁を追いながら、気がつけば平泉を詣で、北陸道を通って、加賀、敦賀、大垣と旅を終えている。俳諧らしい軽さを保ちながらも、しっとりと旅の出来事や楽しみ、物寂しさを語ってみせる腕前にうなづきながら読んでしまう。見事なものだ。
2020/05/01
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