大塩平八郎・堺事件 (岩波文庫)
大塩平八郎・堺事件 (岩波文庫) / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
『大塩平八郎』における義と心。一方は大義あれど、その計画と手段に難。他方は対応と対策に難あれど、大義と物量で克服。字面の共通項は大義と計画性だが、異なる性質。1点目の共通項は、民の支持の無さ加減。民衆の心なければ、”私”義であり、義”務”と解釈。2点目の共通項は、胆力。判断・決断を他者・”流れ”に委ねるリーダーシップ。但し、心底には差異。平八郎の諦めと、奉行所側の焦燥感という印象。対照的な『堺事件』。志士の覚悟の次第が周囲に及ぼす影響は、率直に心地良い。命をもって義を体現。勝てないですよね。
2018/12/13
モリータ
◆長らくぶりの再読。前読んだ記録はあとで探す。大岡昇平の『歴史小説論』を読みたいのもあって同じ岩波の『阿部一族』から読んでいたが、ちょうどこの前に読んだ短編小説集に中山義秀の「土佐兵の勇敢な話」が収録されていた(これも既読だが記憶になく…)。
2020/06/16
猫丸
同僚から薦められて。いわゆる歴史其儘スタイル。直接的社会変革の挫折をえがく「大塩平八郎」と、名分があればすぐにも自死できる古き日本人の話「堺事件」。とにかく命が軽いなあと思わせる。それとも我々が人間の命を重く見すぎているのか。自殺を除くと、たいていの人間にとって死は不意に訪れるものだ。どうせいつかは死ぬのだから、死ぬタイミング・死に方くらいはじぶんで決めるのもアリだろう。人類がこれだけ長く続いてきたのに、簡便な死に方が広く伝承されていないように見えるのは意外である。
2022/04/19
qwer0987
鷗外らしい淡々としたタッチの作品。しかしどちらもその中で描かれる人間の描き方は丁寧だ。『大塩平八郎』は、非常時なのに命令系統の遵守にこだわる官僚体質の人物や、討伐に行けばいいのに日和っている上層部、理想と現実を見せつけられる大塩たちの姿などが印象的で、それらの群像劇が心に残った。『堺事件』は死を前にしているのに、甕に入るなどふざけたような態度を取る侍たちの姿が忘れがたい。そんな死を軽いものと考えるような態度に侍の心を見る思いがした。
2016/03/22
ダージリン
短編二編。森鷗外の端正な筆致はやはり味わいがある。堺事件は聞いたことはあったが、こういう事件だったとは。切腹の場がある種ハイテンションな晴れの場と化しているかのようだが、どこまでが脚色なのか。
2017/08/18
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