あひゞき,片恋,奇遇 他一篇 (岩波文庫 緑 7-3)
あひゞき,片恋,奇遇 他一篇 (岩波文庫 緑 7-3) / 感想・レビュー
毒兎真暗ミサ【副長】
ツルゲーネフが別荘に保養に行った際、美しい白き女性に出会う。その女性は天真爛漫で、彼はその魅力に溺れた。しかし彼女が女になった瞬間に、彼は絶望する。初恋は若かりし夢物語ではけしてない。全てを知り尽くし、振り返ったときにわかるのモノ。あなたに打たれた、傷を舐めるのも片恋。あなたの影を探すのも、また片恋。
2024/06/03
みつ
二葉亭四迷が明治21年から30年にかけて翻訳したツルゲーネフ作品集。近代口語文の成立と発展を主眼に置いた中村真一郎の『文章読本』だったと記憶するが、二葉亭の口語文は翻訳物の方が自らの小説よりも先を行っていたという趣旨を読んだことがある。2種の訳が掲載された『あひびき』(実際の表記は繰り返し符号(?)を使用)の早い方からもそれは明らか。この林の描写は、国木田独歩の『武蔵野』にさぞ影響を与えたことであろう。どの作品を読んでも、外国作品の翻訳というよりも日本人が外国を舞台にとった創作のように読めるのが不思議➡️
2024/03/24
順子
亡き父の本棚にあったけど字が小さすぎたので新版で読もうと古紙回収に出しましたがやっぱりこれを図書館で借りました。古風な日本語が趣があって良かったです。苦労して翻訳した結果だろうけど語尾が「です」「だ」「ます」体が混ざっているような。洗練された翻訳ではないと感じました。が、原作を出来るだけ忠実に日本語にした結果なのかも(←後書きによると)。ちょうど今やっている朝ドラの牧野富太郎物語の時代ですね。外国の植物名を日本語に出来ないところとか色々ふむふむ。
2023/06/15
u
恍惚を誘う文章です。独歩の澄明な自然描写はここから多くを得ているのだなあと。でもうっとりさせるのは自然描写に限らず女性描写にしてもそうで、常に当事者としてではなく第三者、あるいは当事者としても真正面からでなく、どこか気後れを感じさせるような、ちょっとずれた場所から盗み見るように描写していく様はトーマス・マンと似ているなと思いました。全篇よかったけど、なかでも「片恋」がよかった!「あひゞき」は初稿のほうが好きかな。ツルゲーネフは神西訳の『はつ恋』も読んでいるけど、断然こっちの方が好き。二葉亭の訳は癖になる。
2017/10/22
bandil
二葉亭四迷の文語を読むために購入したが、ツルゲーネフの紡ぎ出すストーリーにも打ちのめされ、頭がくらくらするくらいに満足度の高い読後感であった。文語の語彙量の豊富さを見るにつけ、明治~大正期に文豪が何故ああも輩出されたのかが窺えた気がした。これが二葉亭の発案か否かは分からないが、漢語に口語のルビをふって重層的に言葉の意味を表現するのは日本語ならではの楽しみであると思う。出版当時、多大な反響を巻き起こしたのも頷ける名作。読んで良かった。
2016/04/10
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