風流仏,一口剣 (岩波文庫 緑 12-7)
風流仏,一口剣 (岩波文庫 緑 12-7) / 感想・レビュー
いるる
『風流仏』(1889)文章が難しく読み進めることに時間が掛かった。仏師・珠運の彫った仏が龍に姿を変え、珠運とともに天に昇るというびっくりのラストだった。写実主義と同時代にこういう小説もあるんだなぁと思った。露伴って西洋化に良いイメージを持ってないのかなぁ。『一口剣』(1890) ともに駆け落ちした女についた一口の嘘から、刀鍛冶・正蔵は窮地に追い込まれ、何もかも失う。失ったが故に決心が固まり、嘘を真に変えるの話。手塚治虫の『火の鳥』とかにありそうだなぁと思った。
2015/11/01
あにこ
時代劇映画のような話だけれど、こういう分かりやすい筋書きがわたしは好きだ。とはいえ、あまりうまい小説ではない。そもそも幸田露伴という人の文学は、技巧の点ではそれほど洗練されたものではなかったかもしれない。言葉そのものはもちろん美麗であるのだが(しかしそれさえも紅葉には及ばぬように思う)、描写がどうもぎこちない。なんて思っていただけに一層、『一口剣』の正蔵に、根性の人・露伴を重ねて見てしまった。■■『一口剣』では、クリエイターの、アマとプロの壁とでもいうべきものが厳しく描かれている。という風に感じた。
2019/09/22
horuso
初期露伴を久々に読んだが、これってマンガにしたらすごく面白そう。誰かが書いていないのだろうか。特に、風流仏は、まさに子爵令嬢と花漬け売りの娘とに分裂したヒロインの後者が木彫りから顕現すると考えれば、とてもマンガ向きだと思う。ただし、後光輪なしで女の子として彫って欲しいのと、昇天は現代では省いた方がいいと思う。幸せに暮らせばいいのでは。一口剣も引き締まった名作で、ラストの決め方がかっこいい。これら2作もそうだが、初期露伴の描く女性って裏切りが多い気がする。よほど手痛い経験があったのか、そういう思想なのか。
2018/04/30
横丁の隠居
面白いのだが、最後の急にファンタジックになっちゃうのがどうも腑に落ちないというか、落ち着きが悪い。露伴先生、結末のつけ方に窮したのではないかと思うのは失礼だろうか。
2014/10/04
qoop
露伴初期の作品ふたつ。両作とも説話のような筋立てに、芸術家の孤独と意思力をこめている。〈風流仏〉では、自分の元を去った恋人の全裸像を彫る仏師の鬼気迫る姿を。〈一口剣〉では惰弱な過去の自分を打ち破る気迫を。著者の理想を書いた作品であり、同時に時代にそった作家像を昇華させたものだろう。しかし、最近こうした文章に接していなかったせいか、短いながら手強かった。
2013/09/08
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