三人妻 改版 (岩波文庫 緑 14-3)
三人妻 改版 (岩波文庫 緑 14-3) / 感想・レビュー
屋根裏部屋のふくろう🦉
好きな作品のひとつで、ここに再読す。紅葉26歳時の作品で、実に豊穣な作品である。 三人の妾の人物像形が優れている(誠、女は恐ろしや)。漢籍の素養からか文章はリズムがあり歯切れが良い。艶やかな絵巻物を見るが如し。「女は衰えればみっともなくなってゆく。それを男は厭う。女が衰えていく原因は何かと言えばそれは心労心痛である。ではなぜ心労心痛で苦しむかと言えばその原因は男なのだ。」つまり男は女の容姿が衰える原因を作って結果を厭うているとは、紅葉誠によく見ている。作品の終盤に一気にヤマ場が来る。
2018/02/03
amanon
内容はともかくとして、古文調の文体が読み辛かった(笑)。複数の妾と本妻、それに亭主を巡る話ということで、つい円地文子の『女坂』を思い出してしまうが、それ程どろどろはしていない。一応主人公は余五郎ということになっているが、彼を軸とした三人の妾の生態を描いたという方がいいだろう。そして、その余五郎といわば対になったと言える本妻麻子の描写が比較的少なくまた一貫して寡黙なのが、却って独特の存在感を炙り出しているような構図になっている所が面白い。ただ、百年以上も前の作品に一切の注釈が無いというのは、どうかと思うが…
2014/02/25
YY
金持ちが女をモノにする、という昔っぽいお話の中に、女四人の個性がはっきり表現されるところが面白い。ただこんなしてモノにしました、でなくて、そのモノにする手段が各々の事情に沿って、しかもその事情と性格が後編の行動にあらわれるという、今から見れば当たり前といえば当たり前のことをしているが、それが気持ちよくかみ合う。
2014/08/31
ほたぴょん
確かこの小説の構造分析を試みた論文を読んだな、と思って探してみたら、前田愛先生でした(『増補文学テクスト入門』に所載)。春水らの人情本に対するパロディを内包しつつ、豪商余五郎による女性征服譚とその瓦解を、園遊会をピークとする放物線のような均整のとれた構成で描いている由。ちなみに余五郎のモデルは岩崎弥太郎だそうです。
2010/02/09
深川路
一番、凄いのは「蜘蛛のお重」の異名を過去に持つ正妻の麻子だと思う。
2010/02/09
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