多情多恨 (岩波文庫 緑 14-7)
多情多恨 (岩波文庫 緑 14-7) / 感想・レビュー
モリータ
いつの時代に読んでもよい、普遍性をもったいい小説だと思う。登場人物が葛藤を抱えていること、何かのきっかけで変化していくということは、小説のリアリティでありおもしろみだと思っている。こういう「病気」になったり失くしてしまったものへの執着で狂気したことがない人には理解不能だろうが、女々しい自分としては、柳之助に共感できるところもあれば、できない(さすがに女々しすぎる)ところもあり、だからこそ心が軽くなる。微笑みたくなる文が随所にあるし、起承転結もはっきりしていてうまいなぁと思う。3人の劇にしてもおもしろそう。
2014/07/14
零水亭
だんだん親友の妻に惹かれていくまでの構成が素晴らしいと思います。
2024/09/12
ソングライン
愛する妻を突然の病で亡くした男が、その喪失感に苦しみ泣き暮らす姿が描かれる長編小説です。毎日墓参りを欠かさず、妻の肖像画を創り、それを部屋に飾り頬ずりする、その異常さを心配し、自宅へ下宿させる親友夫婦。違和感満載の設定ですが、主人公の再生への過程に次第に引き込まれていきます。
2018/10/12
零水亭
全体の流れ、テンポがよかったです。 映像化しても面白そう。
2024/03/23
きりりんご
溺愛する妻に先立たれ絶望の淵に沈む柳之助は一人でいることに耐えられず、唯一の親友である葉山の家に居候をする。 人嫌いで寂しがり、純粋で愚鈍な性格は、義母やその家族、葉山や妻のお種を振り回し、哀れに思われ呆れられるもそんなことは露知らず、妻によく似た油絵を眺めては涙を流し、帰らぬ人とは知りつつも、騒ぐ胸は抑えられず。 情けないその姿に辟易しつつも、葉山やお種の優しさに溜息が出る。彼の自分勝手に腹立つこともあるが、当時の人々がどれほど義理や人情を大切にして生活をしていたかがよく分かる素晴らしい小説であった。
2019/02/03
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