家 下巻 (岩波文庫 緑 23-5)
家 下巻 (岩波文庫 緑 23-5) / 感想・レビュー
kthyk
「夜明け前」の後の物語だが、「家」の出版は明治の終わ「前」より18年前の自費出版。木曽と馬篭の二つの旧家の生活破綻。姉の嫁ぎ先の橋本家と三吉(藤村)の小泉家は共に兄たちの不運により没落生活を余儀なくされる。二人の娘を失い、田舎教師の生活から作家の道を選び、小諸から東京に居を移す三吉は兄たち、従姉妹たちと共に大川周辺での新しい時代を生きる。その世界はあるがままの自然主義。しかし、藤村はやはり「若菜集」や「新生」「春」のように「個」と「我」その生の喜びと不安からは逃げることなく、文学のカタチを生み出していく。
2021/10/31
横浜中華街2024
1911年作品。藤村の父親が主人公のモデルの「夜明け前」が明治維新前後の時代を描いたものであるのに対し、この作品は藤村自身がモデルの主人公で、二つの旧家の没落を通じて「夜明け前」の次の世代の話が描かれている。この小説で感じたのは子供や若者の死ぬ頻度が高いことで、物語の中で多くが亡くなっている。主人公(三吉)には結局7人子供が出来るが最初の3人は幼いうちに病気で亡くなる。これは明治の時代の公衆衛生のレベルの低さが原因であると思われるが、この時代の多産多死は現代のアフリカ諸国を連想してしまった。
2020/03/27
たかぼー(人身御供)
家は家庭のみならず親戚も合わせての家。物語通して暗い話だが、悲壮感は不思議と薄い。一つ一つの出来事にそれぞれ500p位のドラマが隠されているのかもしれないが、それらがオムニバス形式となって詰め込まれているため、悲壮感が薄まったのかもしれない。長いし登場人物とその相関関係を覚えるのは面倒だった(未だによくわからない)が、この時分に読めてよかった。自分はこれを読んで結婚したくなった。
2012/12/05
ピンクピンクピンク
読んだ印象「渡る世間は鬼ばかり」。島崎藤村さんの自伝的リアリズムホームドラマ。旧家の没落と家長制度を描いている。特別劇的な訳でもない、淡々と苦悩煩悶が続くのに物語を見入ってしまいます。登場人物達を素直に受け入れらて、そのままに共感できるというか。歴史物としても楽しめました。『春』『家』と読んでようやく大枠ながらも藤村作品の読み方を掴めてきた様な気がします。
2018/06/04
あかつや
すごく面白かった。やるなあ島崎藤村。これを今まで読まずにいたのは失敗だったなあ。家族の問題ってのは今も昔も誰の家にだってあるだろうが、とくに現代と比べて印象深かったのは、とにかく人がよく死ぬってこと。子どもなんてちょっとしたことでコロッと逝ってしまう。今だったらその子ども1人の死で物語1つを費やしてしまいそうなもんだ。親族の男共は山っ気が強くて、一発当ててやろうとばかりしているが、人の命がこうも不確かな時代なら、その気持ちもちっとはわかる気がする。コツコツ働いたところで明日はどうなるかわからんもんなあ。
2019/07/07
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