修禅寺物語・正雪の二代目―他四篇 (岩波文庫)
修禅寺物語・正雪の二代目―他四篇 (岩波文庫) / 感想・レビュー
jam
歌舞伎の戯曲として描かれた本作は、妄執を描きながらも憐れを誘う。この「憐れ」という心情は、とりわけ古典と呼ばれるものに多くみられ、侘び寂びと共に日本文化の独自性を現す。作品では、北条により修善寺に幽閉された源頼家は怨差に、老面打師は作品(面)に、そして、頼家に嫁いだ老面打師の娘は貴賤への妄執に囚われていた。しかし、各々が僅かばかりの救いを手にする。頼家は娘のかりそめの情愛に。娘は頼家に流れる源という血に。そして、老面打師は娘の死相に。一陣の風にかき消されんばかりの成就が憐れだ。老面打師の名は夜叉王という。
2016/09/21
藤月はな(灯れ松明の火)
「修禅寺物語」だけ既読。「職人暮らしを嫌い、源頼家についていった桂の死に際に頼家の面に死相が出ていたことで自信を失っていた夜叉王が自分の面は未来も予測していたと嬉しがり、桂の断末魔の顔を彫ろうとする心は面職人の怖いまでの真摯さが如実に表れていると思います。「能因法師」の女の打算と男の可笑しみ、「正雪の二代目」は攘夷を解きながら人を欺き、金をせしめる男の小狡さはクスリと笑ってしまいます。こんなにバラエティ溢れる魅力的な歌舞伎作品を描ける岡本綺堂氏など当時の作家は凄いと思わずにはいられません。
2011/12/15
マーブル
『修善寺物語』における娘の虚栄心。『箕輪の心中』では家制度への反発。『佐々木高綱』では勝利者である将軍への反骨心。『能因法師』の自らの作品の価値を高めるためのやらせ風プロデュース。『俳諧師』で選択を迫られる現実を前にした、本音と建て前。そして『正雪の二代目』は風雲急を告げる幕末に蔓延る詐欺行為の顛末。 歌舞伎の演目とは、もともと時代の最先端を描いたもの。そう聞いた事はあるがそれにしても古い時代を舞台としながらも、そこに描かれるのは「個人」に気づき、「個人」の欲望を求めることに正直な登場人物たち。
2022/07/16
入江
『修禅寺物語』を読了。能の面を作る爺さん、自分の娘が死ぬというときに「わかき女子が断末魔の面、後の手本に寫(のこ)しておきたい。苦痛を堪へてしばらく待て」というセリフを書ける岡本綺堂さん。とんでもない人ですね。でもなんだか文章が艶っぽいんだよなぁ。
2016/11/10
shami
岡本綺堂初読。面白かったです。
2014/01/07
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