鏡花短篇集 (岩波文庫 緑 27-6)
鏡花短篇集 (岩波文庫 緑 27-6) / 感想・レビュー
優希
妖しげで美しい幻想の世界に浸るようでした。実在するものと実在しないものが交わる景色は、現実の中にふと忍び寄る怪異そのものです。言葉が美しく、部分が常に全体より優先されていることでぼやけた輪郭が鏡花の文学を幻の見える世界観に昇華しているのだと思います。随筆のほのかな匂いを醸し出しながら幻想文学である鏡花文学だからこそ魅せられるのだと改めて感じました。
2016/01/07
零水亭
初読です。意味がよく分からない箇所も多く、何回か読み直してみます。九篇の中では「薬草取」「栃の実」が印象に残りました。「雛がたり」も面白く感じましたが、悲しいかな、雛人形に縁がなく、用語のイメージが湧きません。新型コロナが治まったら図書館で雛人形の関連図書を調べに行きたくなりました(そういえば、他の鏡花作品では「日本橋」にも雛人形が出て来ますネ)。
2022/02/08
藤月はな(灯れ松明の火)
ユーモラス且つ幻想的な世界観、そして目にも鮮やかな色彩を余すことなく、表現する泉鏡花作品を読むたびに忙しない浮世から離れたようで少し、ほっとします。「国貞えがく」のような世の移り変わりによる一抹の寂しさの余韻と粋な会話がやっぱり、好きです。
2011/09/28
壱萬参仟縁
色使いのよい箇所がある。「薬草取」で、「流(ながれ)が蒼く搦(から)み着いて、真白に颯と翻ると、(略)真蒼な水底へ、黒く透いて、底は知れず(略)」(65頁)のあたり。靑、白、黒の川の情景が目に浮かぶ。他にも、色彩豊かな「雛がたり」(118頁~)。桃の花雛、白と緋と、紫(ゆかり)の色の菫雛。色々な雛が紹介されている。他の短篇からもわかるように、自然描写も色彩描写も素晴らしい。それだけ観察眼が優れていたのだろう。
2014/01/31
メタボン
☆☆☆☆ 読み取れたとは言えないけれど、その言葉の響きの美しさ、妖しい風景はやはり心惹かれるものがある。九つ谺での亡き母を思わせる女との邂逅「竜潭譚」、病母を思い薬草を取りに医王山を目指す「薬草取」、雀たちが愛らしい「二、三羽ー十二、三羽」、雛人形が動く幻想「雛がたり」、端正な文章でつづる平泉紀行「七宝の柱」、修善寺での一スケッチ「若菜のうち」、武生での素朴な風情「栃の実」、河童の話でしゅ「貝の穴に河童のいる事」、質草になったのを取り返してもらい預けていた錦絵は果たして「国定えがく」。再読必至。
2019/02/20
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