照葉狂言 (岩波文庫 緑 27-8)
照葉狂言 (岩波文庫 緑 27-8) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆☆ 鏡花にしては読みやすい作品だった。貢のお雪や小親に対するシスターコンプレックス、思春期の女性に対するムズムズとした感覚を美しい文章で表していると思う。最後の出奔は良く理解できなかった。能の舞台や意地悪國麿との対峙の場面が良かった。
2018/09/20
えも
蔵書の鏡花再読中9▼これも好きな作品ですね。文語体なのに読みやすい。文語体に親しむのに打ってつけかも▼感想は、里見弴の解説中の「いまだ露に春を解しない少年が、年長の美婦人に愛せられ、こなたからも秘かなる思慕をはこぶ、暁の、ほのぼのとした甘美と、夕風肌に滲みる哀切との情感は、(略)宵い空に輝く明星の美しさはもつてゐる」で代弁されてます▼ただ、主人公の最後の決断は、どうなの?と思いますけどね☆
2014/11/12
SIGERU
のちの鏡花世界を構成する、すべての萌芽が茲にある。『夜行巡査』『外科室』で、観念小説の俊英として世に出た彼。だが、続く本作においては、主人公に、貢(みつぎ)という紅顔可憐の少年を配し、姉と慕うお雪と、旅役者の少女、小親(こちか)が、永遠の女性像の二典型として描かれ、情味溢れる傑作となっている。「わが心さだまりたり。いでさらば山を越えてわれ行かむ。慈み深かりし姉上。われはわが小親と別るる斯の悲しさの其をもて、報い参らす」。掉尾の、主人公の独白には、二人の女性のあいだで揺れ動く、哀傷に充ちた想いが滲んでいる。
2022/01/31
瓜坊
少年の頃の記憶はなにか作りモノの舞台上の出来事のような気がするけれど、この物語の前半部分、主人公の貢の少年時代は町そのものが舞台のよう。山と海に囲まれ、古い家が並ぶ大通りなのに往来はなく道は輝き、ガキ大将の一団は豪傑の役に徹して遊ぶ。そして貢はこの舞台のような町の中でさらに日々観劇に通うのである。この二重の舞台構造は、彼が実際に俳優として成長し大人になって町に戻る後半部では崩壊している。町は変貌し、ガキ大将たちもロールプレイなどとうに辞め実生活に勤しんでいる。
2017/07/22
双海(ふたみ)
ずっと積んであった泉鏡花。あれま、本書は案外読み易い。
2014/10/30
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