摘録 断腸亭日乗 上 (岩波文庫 緑 42)
摘録 断腸亭日乗 上 (岩波文庫 緑 42) / 感想・レビュー
lily
ひゃー、噂には聞いていたけれど、凄い生成日記に出逢ってしまった。読書遍歴と希少価値たる詳細な女遍歴が同時に俯瞰でき、当時の空気感もリアルに伝える文豪は永井荷風の右に出るものはいない。いくつもの病を抱えながらも恋と読書と芸術と執筆と生への躍動感が伝播する。自己の生き方へのぶれない芯の強さは誰が読んでも心を打って止まないに違いない。男性が読んでも華麗な素質への羨望からは免れないと想像する。
2019/07/21
KAZOO
これは永井荷風の日記をまとめたものです。むかし全集で6巻になっているのをすべて読んだことがあります。当時はかなりマニアックであったと感じましたが、今回は上下2巻にまとめられたものを再読してみました。上巻には大正6年から昭和11年までの約20年間の日記と西遊日誌も収められています。再読してみると簡単なことでも毎日書いているようで本当によく続けたという感じがします。もう少し物の値段や自分の使った金額などが書いてあるといいと思います。
2017/08/25
杜のカラス
さすが荷風、戦前の漢文調の深い教養を踏まえた日記風の随筆、そして流れるような文体、この世な文章が書けたらと理想にしたくなる文章である。一年間の日記としては短い、様々な激動の時代で、個々の生活にも大きく影響したであろう事件やさまざまな出来事もさらりと書いている。女性との遍歴、ほとんどプロである。あの時代のプロの女性、いまとは少し違っているだろう、こんな生活もすばらしい、羨ましくもある。金も地位もあり、育ちもいい。親の力でアメリカやフランスへ行き、銀行員としても勤務した。本人の教養、環境もいい、戦後も生きた
2024/02/03
榊原 香織
上下巻の上 ”日まさに午ならむとする時天地忽鳴動す”大正十二年九月朔ー関東大震災。 ”こまかき雪降り来たり見る見る中に積り行くなり”昭和十一年二月廿六日ー二・二・六事件。 どちらも直接被害はなかったようで淡々と
2024/02/15
ベイス
上巻は大正7(荷風40歳)から昭和11まで。基本姿勢は厭世隠遁。身内の罵倒から文壇批判、とっかえひっかえの女性の性癖まで、当時の風俗や社会情勢への鋭い観察眼も交えながら生き生きと描く。軍国主義がひたひたと迫る不気味さが、日常の些細な出来事の記述を通して伝わってくる。歴史書や学術書のように上段に構えるのではなく、あくまで私的な日記であることが、かえって当時の雰囲気をありのままに伝えて迫力がある。社会の雰囲気になびくことなく斜めに見つめるこのような独白が、激動の時代をくぐり抜けて後世に残されたことに感謝!
2020/07/25
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