地獄の花 (岩波文庫 緑 42-5)
地獄の花 (岩波文庫 緑 42-5) / 感想・レビュー
うろたんし
「昂然として車の扉に立つ園子が頭上には、水晶の樣な空よりして、美々しく又愛らしく輝き初めた望みの星。」で、仕舞。めっちゃ面白かった。かつて森鴎外をして絶賛せしめたと知り読み始めたこの作品。僕の大好きな佐藤春夫が師と仰いだだけあって、随所に散りばめられた風景描写の美しさに、何度もなんども心ふるえた。それから、彼がこれを書いた年齢は二十四。僕と一年しか変わらないのに。天才かと。(笑)
2012/06/05
駄目男
先日、私の好きな古本屋に立ち寄って隅からすみまで見ていたときにふと目に留まったこの本。 第1刷発行が1954年6月5日となっている。 中をめくるうち果たして読み切れるかという疑問が湧いてきた。 しかし裏には「品切れ」という走り書きがありやはり買うことにした。 家に帰って調べて見るとなんと初版は明治35年、永井荷風24歳の作品とある。 どうりで、それを知って、いやはや、実に重たい気持ちで読み始めた。
2013/08/17
うずまきねこ
作者が24歳の時に上梓した前期自然主義文学。許される罪と許されずに罰が下る罪…不合理だ。黒淵家の状態とかを見ると社会での問題にされる悪っていうのは、人間の汚れとか卑しさを反映した結果だと思う。またその根本となるのが「恋」なんだろう。園子に則して淡々とそれらの出来事や世の内情を描き表せる技量というのは、たとえ本家ゾラに比べては稚拙なものに見えたとしても、素晴らしいものだと感じた。ただ、園子が克己して新たな生き方を見つけても「惚れたものの弱み」のように終わったのが少し悔しい。
2013/09/09
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