フレップ・トリップ (岩波文庫 緑 48-7)
フレップ・トリップ (岩波文庫 緑 48-7) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルのフレップは赤い実、トリップは黒い実。いずれもツンドラ地帯の灌木であるらしい。本書は北原白秋の樺太紀行である。横浜から船で津軽海峡、宗谷海峡を抜け一気に樺太の安別へ。樺太はその当時は日本の領土であったので、白秋は旅行団の一行とともにソ連国境のすぐ近くまで行ったのである。文章は軽快といえばそうなのだが、この一行は白秋を含めて最初からずっとお酒を飲んでばかりであり、あまりにも軽薄な感が否めない。中国服に身を包んだ白秋の写真が挿入されているが、これまた小太りで変に俗っぽい。私の白秋観とは大いに違うのだ。
2024/05/14
Fondsaule
★★★☆☆ 北原白秋といえば詩だけれど、これは紀行文。横浜を船で出発して、樺太を巡る旅。まだ、南側が日本の領土だったサハリンは日本語で地名が出てくる。どんなところか気になるので、現在のロシアの地名を調べて、ストリートビューで見に行ってみる。西海岸から横断し海豹島ではロッペン鳥とオットセイを眺める。時々、文章に詩が交じり、とても自由な感じ。
2018/06/06
みーまりぽん
読み切るのにずいぶんかかっちゃったなあ。。 「フレップ・トリップ。樺太葡萄の赤い実と黒い実。・・・」大正14年、鉄道省主催の樺太観光団の一員として2週間、汽船による航海・各地での巡遊を経て目的地の海豹島まで、心弾ませている北原白秋さんです。 詩のイメージと違う、遊び心のある文章で、目に映る光景を文字に写し取ろうとしているようです。後半の「ハーレムの王」あたりでは言葉による映画に挑戦してますね。 ただ・・・ま、時代的にも仕方ないかもしれませんが、庶民を見下してるとこがあるような雰囲気がちと気になったかな。。
2015/01/03
qwer0987
樺太旅行を描いた紀行もの。まず目を引くのは文章のリズミカルな雰囲気と詩的な描写だ。体言止めや同一または似たような単語をくり返すことで躍動感が生まれており、その勢いに読んでいて心惹かれた。旅行中の雰囲気も良く、同行者との会話の実に楽しげな感じや和気藹々とした明るい空気がすてき。船中での愉快なやり取りや樺太横断でのドタバタした味わいなどは印象的だ。また異国に近いこともありアイヌやロシア人に旅人らしいエキゾチシズムを感じている。その中でもセーニャ一家の話はしんみりした味わいがあり心に残った。
2023/12/03
なおこっか
梯久美子『サガレン』からの流れで読んだ。白秋の目には風景もリズムを持って飛び込んでくるらしい。非常に調子よい文章、浮かれた北海行である。白秋訪問時のサハリンは、日本からの役人がいばっており、現地住民に対し「まだ日本語が使えない」などと言う。敷香でのロシア一家との出逢いは良い想い出のようだが、白秋もまた無知な観光客故の上から目線がちらつく。象徴的な啄木との邂逅の記憶、「奥州や北海道は鬼の国」と口走って啄木を怒らせ、慌てて自分は熊襲だからと取り繕う。
2023/08/14
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