新編 みなかみ紀行 (岩波文庫)
新編 みなかみ紀行 (岩波文庫) / 感想・レビュー
NAO
ちょっと時間ができたら、ふらりと旅に出る。ちょっと金に余裕ができると、足がむずむずする。時間も金もなくても、その日の気分で、汽車に飛び乗ってしまう。牧水はそんな人だった。行き先が決まらぬままの旅も多かった。ふらりとその場の雰囲気で駅を降り、ただ当てもなく歩いた。行き先が決まっていても、日程が詰まっていても、景色に誘われて足を止めたり、寄り道したりした。とらわれないその行動は自由で、ただ自然と温泉と酒を愛した。放浪の歌人、若山牧水。誰にでもはこんな旅などできないからこそ、彼の紀行文は憧れとなり、夢となる。
2016/11/18
こばまり
こんな旅ができたならとうっとり読んでいたところ、驚きの記述を発見。旅人牧水、なんと我が伯母の婚家で一泊している。伯父は長男ではなかったので旅館は継がなかったが、長らく精進湖畔で接客業を営んでいた。親近感が湧き、ますます牧水先生のことが好きになった次第。
2022/01/08
クラムボン
牧水の紀行文、だいたい大正期だと思います。交通手段は鉄道が第一、地方では軽便鉄道に乗合馬車があるが、残りはほぼ歩き。「吾妻の渓より六里が原へ」は11月下旬、元々が信州松本の歌会に合わせた旅。途中馬車で通った吾妻渓谷に心服してしまい予定を変えて徒歩で戻って見に行く。牧水さん感極まったのか夕暮れの吊り橋で持参の冷酒を煽る。そこで書き記した歌を唱って帰る。この予定外の行動が雪解けの泥田の山道を泣く思いで歩き、乗合馬車に乗れず、鉄道にも乗り遅れてしまう。どの短編も歌よりもむしろ紀行文が気に入りました。
2021/04/03
にゃん吉
交通機関が未整備なので、ときに悪天候の中で険しい道を歩き続けたりと、道中は、寂しさや侘しさと共にあり。スマホなどないので、現地の友と会えるかも覚束なく、会えたときの喜びと、友と酒を酌み交わし、語らい、湯に浸かる楽しさは、ひとしおで、その分、別れ、旅立つときの寂しさは、また際立つ。まだ現代的な観光地化をしていないので、道中や訪れる名勝には、ありのままの自然があり。詠まれる歌には、そんな旅の空の風情や機微が込められている。現代では味わうことのできない、しみじみとした旅情を感じることができる一冊でした。
2021/05/08
hitsuji023
牧水はよく歩くという印象が第一。歩いて、酒飲んで、友人や生きあった人と食を囲んでまた一杯。歩いて、酒飲んで、短歌を詠む。決して派手な旅ではないけれど、自由に行き先を決めて、時おり面白い出来事なんかもあって良い紀行文だ。
2019/05/02
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