恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫 緑 63-1)
恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫 緑 63-1) / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
泥臭く生きる中で見出す「生」。”晒す”『三浦右衛門の最後』と『形』、対照的に”悟る”『恩讐の彼方に』と『忠直卿行状記』そして『俊寛』。心情変化の過程に垣間見る喜怒哀楽と、主人公の半生。見栄や体裁などの”壁”を乗り越えて本質と向き合う瞬間は、形は違えど現代にも通じるスジ道。本著に含まれる既読の『藤十郎の恋』なども、思い起こすと人の持つ暗部分への教示が滲んでいる感。色が若干異なるのが『蘭学事始』。当初から”明暗”に揺れる心。辿り着く解は、明暗とは異なる”真”。これもまた自然回帰也。
2018/06/26
カブトムシ
私は、昔活字で読んだり、今も朗読テープを聴いています。しかし、あらすじはどなたかにお任せします。また、あらすじは読んでのお楽しみということもあります。この菊池寛は、芥川賞を創設しています。芥川龍之介の友人だった人です。私は菊池寛の初期の短編を高く評価します。また、大正時代の志賀直哉の短編を高く評価した人でもありました。志賀の「豊年虫」にもでて来ます。その頃は、大衆文学の流行作家で、「真珠夫人」などがあります。大正時代の文学者を代表するのは芥川龍之介ですが、志賀直哉は自分の名前が付いた文学賞を禁じたのです。
おにく
"忠直卿行状記"は、桐野夏生さんの選集、"我等、同じ船に乗り"で紹介されていて、強く印象に残りました。あらすじは、とある血気盛んな若殿が、ある日偶然に家臣のないしょ話を耳にする。それによると、これまで家臣らは、若殿に勝ちをゆずるため、わざと負けていたと言う。虚しさと寂しさで誰も信用できなくなった若殿は、やがて暴君のように暴力の限りを尽くすようになる。。どの短編も示唆に富んでいて、読み物としても大変おもしろい。太宰治の"お伽草子"と同様、こうした古典文学に触れていきたいです。
2021/07/15
リボー
※マニアックなレビューすいません。「STEINS;GATE」というゲームがあるのですが、それを友人のすすめでやっています。そのゲームをやっていて、思わず、そのゲームの主人公岡部が「恩讐の彼方に」に登場する主人公と重なって見えてしまい、思わず読み直しました。詳しい描写はネタバレになるので省きますが、このゲームをやった方ならこの文学作品を絶対に味わえるはずです。だまされたと思って見てみて下さい。(青空文庫でも読めます)両作品の主人公を重ね合わせて思わず天を仰ぎました。
2012/12/04
ぴー
人生初の菊池寛。自分には難しいイメージがあったが、 短編集だったので、何とか読めた。個人的には、『名君』、『蘭学事始』、『俊寛』が印象に残った。特に『俊寛』は自分が予想した内容と異なり、清々しい気持ちになった。
2024/09/10
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