父帰る・藤十郎の恋――菊池寛戯曲集 (岩波文庫)
父帰る・藤十郎の恋――菊池寛戯曲集 (岩波文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
「屋上の狂人」は兄弟愛が素敵。「父帰る」は今まで家庭を支えていた息子が、放蕩者の父に対して激高したのは仕方がない。でも最後は苦い。「藤十郎の恋」は初読時は藤十郎の屑ぶりに顔を顰めっぱなしですが、歳を経た今では「一人の女を犠牲にして得た芸の肥やしだ。ちゃんと大成なさい。もし、その罪を踏まえないで芸を疎かにするならあんたは役者としても人間としても屑だ」と思い切るしかない。「敵討以上」は贖罪と憎悪が入り交じる中で命懸けの仕事をやり遂げる事で迎えた爽やかなラストに救われました。
2016/11/16
Willie the Wildcat
幸福、愛情、家族などの価値観を問い掛ける作品群。表題作『父帰る』は、心身における父親への思いの乖離と、長男という立場が賢一郎を苦しめる件が切ない。対照的な『藤十郎の恋』。”鬼気迫る”の件が「女遊びは芸の肥やし」を暗喩。意図的に他者を傷つけても許される”妥当な”理由となるのか?一方、『入れ札』の九郎助の人間らしい”卑しさ”に共感。負け戦と知りつつも、師(親分)への義と自負心を貫く。”更に”暗くなったお天道様?いいじゃん!『敵討以上』も同様。信念に潔さ。
2018/05/01
かっぱ
松本清張のムック本が本書を手にしたきかっけ。菊池寛といえば「父帰る」と知っていながらいままで作品に触れたことが無かった。どの作品も意外にも古臭さはあまり感じなかった。自宅にいて演劇を何本も鑑賞した気分。楽しめました。「父帰る」が1920年に春秋座によって新富座で上演された際には、観客席に作者の菊池寛を始め、芥川龍之介、久米正雄、吉井勇などが観客席にいたそうで、幕が下りた時には誰もが感激で涙していたそう。菊池寛の同時代作家、久米正雄の私小説が読んでみたくなりました。
2020/05/03
AR読書記録
簡潔な感想としては、解説にあるここです。「菊池寛の戯曲は...極めて単純、素朴な構造でありながら、誰しもの心の奥に直に衝撃を与える強い表現力を持つ」。「父帰る」とか「敵討以上」(「恩讐の彼方に」を戯曲化したもの)とか、「実は読んだことなかった名作」シリーズに数えるものなんだけれど、存外短かかった。そのことはちょっと意外だったけれども、でもそのさっと読み終わる間に、けっこう感情的には一気に持っていかれるところがあった。うん、おもしろかったな。
2017/06/30
へたれのけい
余りに唐突な終わり方に「??」と思った。時間が経つと「これって心の隅っこに残る話かも」と変わってきています。
2017/02/13
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