蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫 緑 88-1)
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫 緑 88-1) / 感想・レビュー
ベイス
松本清張の昭和史発掘「小林多喜二の死」の章に、多喜二の母が亡骸と対峙したときの言葉が記されている。「心臓が悪いって。どこ心臓悪い。どこもわるくねえ、子どものときからよう泳いどった~何も殺さないでもええこゥ、はァ、なんていうことを、どこゥ息つけんようになった」。この母の悲痛な慟哭を想いながら読む。不敬罪とされた、蟹缶詰の「献上品」のくだり。一語一句、(結果的に)命を賭して記した言葉。書かずにはいられなかったのだろう。胸に迫ってくる。
2021/01/09
優希
有名なプロレタリア文学ですね。どこまでも暗さが伴いますが、思想価値を超えて、あくまで乾いた語り口調なので、時代を時代として見ることができるのだと思います。
2022/08/26
優希
再読です。搾取と労働、組織と個人。それはまさに地獄のような風景と言えるでしょう。思想評価を超えてプロレタリア文学の古典となったのも頷けます。
2024/02/09
Miyoshi Hirotaka
国家が国民に一方的に暴力を振るう局面が歴史にあった。ロベスピエールの恐怖政治、スターリンの農業集団化と大粛清、中国の文化大革命、ポルポトの大虐殺。残念なことに一国の悲劇は他国の歯止めにはならずに繰り返された。わが国の悲劇はこれらに比べはるかに小規模だったことは幸運。共産主義の世界革命論は既にドイツで破綻したにも関わらず、方針を変えなかった指導者が問題。共産主義の先に理想卿はなかったという答えを知った我々が引き出すべき教訓がある。それは、自国を他国のイデオロギー論争の舞台にしてはいけないということである。
2014/12/20
佐島楓
こういう作品こそ、文学のできる仕事の究極に近い形なのではないかと思う。
2014/09/06
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