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防雪林・不在地主 (岩波文庫) (岩波文庫 緑 88-3)

防雪林・不在地主 (岩波文庫) (岩波文庫 緑 88-3)

防雪林・不在地主 (岩波文庫) (岩波文庫 緑 88-3)

作家
小林多喜二
出版社
岩波書店
発売日
2010-04-17
ISBN
9784003108833
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防雪林・不在地主 (岩波文庫) (岩波文庫 緑 88-3) / 感想・レビュー

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たぬ

☆4 酷すぎないかこれ…。100年前の開拓民の暮らし@北海道ってみんなこんなだったの? おなか大きくして戻ってきた娘を土間に蹴り落とすとかさあ。地主は小作人たちを奴隷扱い、下手すれば使い捨ての道具としてしか見ていない。お母さんの口が異様に悪いのもこのすさんだ生活と大いに関係ありそう。それでも暗い中にも熱さや勢いのようなものは感じ取れた。

2024/07/17

松本直哉

横なぐりの吹雪に耐えて佇む防雪林のように、荒涼たる石狩平野の小作農民は過酷な自然に耐え、地主の暴虐に耐え、しかし自らの作物はそのまま小作料となるために口には入らず、芋やかぼちゃで飢えをしのぎ、不作の埋合せに出稼ぎに出て、…読むのが苦しくなるような農民の暮らしの中から地主への不満が鬱勃と沸き立ち、しかし尻込みするものもあり、なかなか団結にはいたらず、そんな中で一匹狼のように行動する源吉のふてぶてしさ。夜陰に紛れて鮭を密漁する冒頭。そして石油缶を手に地主の屋敷に侵入する結末。

2015/01/18

壱萬参仟縁

「百姓はどの百姓も多かれ少なかれ、あんまり働かなければならないこの世の中にイヤ気がさしていた」(56頁)。現代の非正規パート労働にも通じる。「こんな生活でない、もっといい、本当の生活があると、いつでも、考えていた」(108頁)。なるほど。1928年時点の話だが。現代もだからこそ、こうしたメンタリティが経済成長の原動力たり得てきたのだ。不在地主 の方は、気楽に読んでほしい、と冒頭に書いてある(154頁)。兵士に、「何するだ! 稲!! 稲!!」(235頁)の場面は、食糧を兵士は屁とも思っていないのかと思えた。

2013/04/14

まどの一哉

「防雪林」の冒頭主人公源吉の母や妹、幼い弟たちの家の中での様子が実にいきいきとして魅力的で、また深夜に鮭の密漁に繰り出す情景などもその空気感まで伝わって来る。テーマ以前にこの冒頭だけで心躍る名品だ。 源吉が野生的な単独行動者で、組織的な運動による解決を選ばないが、そういうところもかえって良い。 この時代すでに札幌・小樽などは近代的大都会で、舞台である開拓された寒村とあまりの差に驚く。搾取されていることにも気付かない村人(小作人)の、地主様への精神的隷属はまるで現在の自民党信者と瓜二つ。

2023/01/23

ぺおる

ちまちま読んでいたのを読了。タイトルからわかる通り、北海道における寄生地主と小作人との間に発生する惨たらしい搾取構造が描かれているが、『防雪林』と『不在地主』(実は不在地主は防雪林改題として書かれたためその構成自体は必然似ている)それぞれの描写は大きく異なるような印象を受けた。(この表現が的確かは分からないが)前者が北海道の自然や主人公・源吉の情動や人格を描くのに芸術的色彩が強く思われるのに対し、後者はより理論的・マルクス主義のパンフレット的な印象が拭えない。個人的には防雪林の方が好み。

2020/05/13

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