変容 (岩波文庫 緑 96-2)
変容 (岩波文庫 緑 96-2) / 感想・レビュー
lily
老年であっても、突き詰めれば肉体的精神的な若さは女によって保持されるものであるし、感受性は益々大胆にする。それが愛の力であるならば、抗力は無力だ。生の充溢を封印した、その心に輝きはあるのか。生命は感覚としてのみ知覚されることを知っているのに?世の約束事の正体も掴めぬ流動的で不確定なものに翻弄されて何になる?命への謳歌を呼ぶ方へ。
2019/07/23
A.T
60歳の主人公が、連載当時の昭和40年代から過去を思い返すシーンがある。ここだけ異彩つのは、著者の同窓生 小林多喜二の影響もあるのだろうか。P209 「ことに女は抵抗できない身体を持っていながら、なぜその運動に入って行くのか?彼らが、彼女らが革命の情熱などと言っているものは、夏の夜の草原で燃えている巨大な火の中に舞いながら殺到して焼かれる羽虫と同じ、浅はかな一瞬の衝動ではないのか?…やめてくれ、と私は叫びたいのであった。…」
2019/08/12
桜もち 太郎
初めて読む作家。還暦をこえた画家の性の問題をテーマにした物語。画家の物語を通し作者自身の若いころからの性に関する意識の変容を考察したもののような感じがした。作者が真正面からこの問題に取り組んだ姿勢がよくわかる。谷﨑を支持していた理由もよくわかる。人間誰もが老いていく。性行為とともに生きていくんだなぁと実感した。精神の繋がりが深いほど快楽は増す、男も女も年を重ねても性欲は衰えない、年を取っていくのが楽しみなような、ちょっと希望が持てるような気がした。性描写はほとんどない真面目な本です。
2015/04/29
zeeen
戒律、律儀さ、道徳、羞恥心そんなものを厭わず囚われない主人公。おじぃ元気やのぉ。
2022/07/06
mim42
私が選ぶ「昭和戦後文化に満ち溢れた小説」ランキングにて映えある一位。
感想・レビューをもっと見る